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2017年06月28日

やってみなはれ!

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「どうでっか」
「あきまへんな。焦げ臭うて飲めたもんやおまへん」
「そうでっか、あきまへんか」

赤玉ポートワインで大成功をおさめた鳥井信治郎は、今度はまわりの反対を押し切ってウイスキー事業に乗り出しますがそのウイスキーの売れ行きが芳しくありません。巨額の資金をつぎ込んだだけに会社経営も窮地に陥ります。

20170628.jpg今日6月28日の日経新聞の連載小説「琥珀の夢」には、国産ウイスキー第1号発売時の様子が描かれていました。ご承知の通り鳥井信治郎は雲雀丘学園の創立者です。本学園は建学の精神に「孝道(親孝行)」を謳っていますがもう一つ、日頃、信治郎が口にしていた言葉に「やってみなはれ」があります。

ウイスキーづくりはまさしく「やってみなはれ」精神そのものであり、信治郎の生きざまでした。小説の今後の展開が楽しみですが、逆境こそチャンス、失敗こそ未来への財産と捉えた信治郎の心意気は、親孝行とともに学園の子供たちにしっかりと伝えたいと思います。因みに「学園長便りGo for it!」は「やってみなはれ!」という意味です。

昨年の今頃でしたが、著者の伊集院静さんが雲雀丘学園に小説の取材でお訪ねになりました。すこし学園のことを書いていただけたらありがたいなあと思っています。(2017.6.28)

2017年06月19日

三浦雄一郎氏

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山登りをしていた人たちが、道に迷ってしまいました。「今、どこにいる?」と地図を真ん中にあれこれ相談をはじめました。しばらく協議ののち、遠くを指さしながら「わかった!今、我々はあそこの峰にいる」。

梅雨入り宣言はされたものの、今年の梅雨はいっこうに雨が降りません。空梅雨だ、何だと言われていますが、梅雨入りが遅れているだけではないのでしょうか。上の「山登りの協議」のよう思えます。

「夢いつか頂へ、80歳のエベレスト挑戦」と題し、登山家、三浦雄一郎氏の講演会(学園PTA主催)が、6月17日、学園講堂で開催されました。生徒の保護者が中心ですが、一部地元の方もお招きし、学園講堂は立って聴かれている方もおられるほど盛況でした。

三浦氏は3度の世界最高峰エベレスト山(8848m)登頂に成功し、世界最高齢(80歳)での登頂記録も樹立しました。70歳、75歳とエベレストに登頂しましたが76歳の時、スキー場で大けがをします。もう復活はあり得ないと思われたのですが、エベレストへの憧憬、登頂への強い意志が驚異的な回復をもたらし、80歳の登頂をなしえたのでした。

「守りの健康から、攻める健康へ」、今でも2kgの重しを両足に、背中に10kgを背負いながら歩かれるそうです。昨晩も1kgのステーキを平らげたとお話しでした。

20170619a.jpg学園からお願いした色紙には「夢いつまでも」と書かれていました。欧米人と違って日本人は、夢ははかないものと思うようです。夢は実現するものです。三浦氏は「ほら吹き大会にならないように」と言いながらも90歳のエベレスト挑戦を話されていました。夢、強い意志と執念、学園の子供たちにもしっかりと教えていきたいと思います。(2017.6.19)

2017年06月09日

学園長に就任して
(Go for it ! 掲載分)

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気象庁は7日、近畿地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。平年並みですが昨年より3日遅いようです。ここ数日、朝夕は涼しく、しのぎやすい日が続いていましたが、しばらくはうっとうしい日になるかもしれません。

「実力としては僥倖としか言いようがありません」。将棋の藤井聡太四段が6月2日に20連勝をしたあと語った言葉です。14歳、中学生です。自らを振り返ってみて、果たしてこんなことが言えたかどうか。すごいを通りこして、すごみさえ感じます。
 
この4月に学園長に就任しました。雲雀丘学園には幼稚園、小学校、中高等学校と四つの校種があります。学園は建学の精神に「孝道」を掲げていますが、この旗のもと、幼稚園から高校まで15年間を、どのように育てていくか、そのためには校種間の一貫性、継続性、蓄積性、相乗性が極めて大切だと考えています。

藤井四段のすごさは望むべくもありません。日々地道な改革を重ね、魅力ある学園づくりに取り組み、子供たち、保護者の皆さんのご支持をいただきたいと思います。(2017.6.8)

2017年06月08日

学園長に就任して
(学園誌「ひばり」掲載分)

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「君たちは甲子園に一イニングの貸しがある
 そして 青空と太陽の貸しもある」
この詩を書いた作詞家・阿久悠さんの記念館が、明治大学にできたことを聞いていたので今年の連休に行ってきました。阿久悠さんは昭和の歌謡界で、数々のヒット曲を世に送り出したと同時に、大の高校野球ファンとしても知られています。観戦の時の詩をたくさん残していますが、そのうちの一編の一部が冒頭の詩です。
 これは一九八八年の夏の甲子園に初出場した岩手県立高田高校に贈られたメッセージです。高田高校の相手は滝川二校、試合開始から小降りだった雨は回を追うごとに激しくなり、グラウンドのあちこちには水たまりができました。ぬかるみの中でのゲームでユニフォームは泥だらけになりました。そして試合は中断、十一分後に主審は試合終了を宣告しました。
 九対三、五六年ぶりの降雨コールドでした。高田高校ナインは一イニングを残して甲子園をさらなくてはなりません。
 「一イニングの貸し」。阿久悠さんは何という誇りある表現をしたのでしょうか。高田高校は敗戦ながらも雨中、堂々と戦いました。悔いなし、それだけで十分。その上で高田高校はあの甲子園に「貸し」を作ったのです。誇りある「貸し」はいつまでも部員の心の中に生き続けその後の人生に大きな財産となりました。
やがて暑い夏となり今年も雲雀丘学園野球部は甲子園を目指しますが、大切なことは試合に勝つことではありません。クラブ活動を通して人格を磨くことです。勝利することにこしたことはありませんが、生きていくうえで、もっともっと大切なことがあることを掴んでほしいと思います。何も野球部に限りません。仲間と泣き、笑い、語り、時には喧嘩し合って心の成長を目指してください。
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そして何のために練習するかということも大事なことです。いつかテレビでマラソンの有森さんが母校高校の陸上部の指導をしている様子が映りだされていました。部員の練習の動きを見ていた有森さんは気になった生徒を呼び止め、一人ひとりに今何をやっているかを厳しく問い詰めていました。何のために、何を目的として練習しているかは、向上を図るためにはきわめて大切なことです。練習に限ったことではありません。人間というものは、ついつい惰性に流され、楽をする方に走りがちです。
以前、中高の校長室から校庭のアンツーカーを走る生徒の練習風景を見ていました。生徒はコーナーにさしかかると内側にそれ、芝生の上を走っています。これでは何のために走っているのかわかりません。生徒もそして指導者も「何のため」ということを頭に叩き込んでおかないと成長は望めないと思います。

さて私、この四月から学園長に就任しました。雲雀丘学園には幼稚園、小学校、中高等学校とあります。それぞれに園長、校長がいて学園を良くするため懸命の取り組みをしています。しかし校種間の連携や一貫性についてはやや不足の感は否めません。幼稚園から高校まで一五年ありますが、この期間で子供たちをどう育成していくかの考え方が重要であり、喫緊の課題と申せます。
例えば英語教育も日本では時間をかける割には話せない人が多いと言われています。私自身もそのとおりです。一五年でどう話せるようにするかを、校種の壁を乗り越えて取り組まねばならないと思います。他の教科においてもしかりです。
連休前でしたが今年大学に進学した卒業生が私を訪ねてきました。進学して間もないですが、楽しく新鮮な毎日のようで安心しました。高校との違いは自ら求めていかないと得るものはなく、特に少人数の教室では、積極的に発言しないと取り残されてしまうとのことでした。そのためにはみんなと溶け込む力、表現力、伝える力が必要と話していました。
彼とは在学中、朝七時半からの早朝勉強会に何度か出席し、新聞記事を題材に話し合いました。経済問題が主になりましたが正解はありません。どうしてそのような結論を導き出すのかの説明が大事なのです。あえて他人と異なる意見も出しました。こうした雲雀丘学園での勉強会が今、大いに役立っているとのこと、大変うれしくまた頼もしく思いました。
先ごろ「新学習指導要領案」が公表されましたが、改革の方向性についてはどなたも異論はなかろうと思います。問題はどうやって実現を図るかです。「アクティブ・ラーニング」という言葉は使われず「主体的・対話的で深い学び」となりました。基本的な知識を習得したうえで課題の発見や解決を通じて思考力や表現力を磨いていくことが目的です。学習は自らが主体的に取り組み、アウトプットしなければ身に付きません。グループ討論やプレゼンテーションは社会に出ても重要でコミニュケーション能力の向上にもつながります。学園全体の取り組みがますます重要になってきています。(学園誌「ひばり」より)