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2013年01月30日

明日の講演会

 明日31(木)の午後、高1・2年生対象に学園講堂にて講演会が行われます
世界的な毒物学生物兵器・化学兵器に関する権威である杜祖健(Anthony T.Tu)氏による『日本で起きた化学テロ事件』
杜氏は1994~95年に起こったオウム真理教によるサリン事件の捜査に関わり、その事件解決に大きく貢献されました
 中高生のみなさんは、オウム真理教、地下鉄サリン事件と聞いてもあまりピンと来ないかもしれませんね。サリンというのは毒ガスの中でも最も強力であり、戦争で使われるような神経ガスの1種です。なぜそのようなものが、現代の日本で使用されたのか。サリンが使われた二つの事件では、多くの死傷者を出し、教団の存在と一連の事件は大きな話題になりました
 当時、判らないことだらけのサリンという毒物について、助言を求められたのが杜氏だったのです。そしてこの事件に関わって以降、日本にも頻繁に講演に来られるようになったそうです
 今回の講演では、オウム真理教の化学テロを表と裏から見て、その内容をお話ししていただけます
自伝である アメリカの大学へ 留学生から教授に/Anthony T.Tu (化学同人)をいただきました

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今回の講演で、サリン事件に興味を持った人、関連書籍も出版されています。図書室には村上春樹さんの著書があります

アンダーグラウンド/村上春樹 (講談社)
 地下鉄サリン事件の被害者、62人のインタビューで構成されたもの。なぜ事件は起こったのか?ではなく、1995年3月20日、東京の地下鉄に居合わせた人々は、そこで何を見て、どんな行動をとって、何を感じ、何を考えたのか、を丁寧なインタビューで構築してあります

約束された場所で underground2/村上春樹(文藝春秋
 アンダーグラウンドの続編。こちらはオウム真理教信者と元信者たち58人のインタビューです。癒しや救いを求めて入信した彼らが、なぜ犯罪にたどり着いてしまったのか。前作では聞き手に徹していたのに対し、こちらのインタビューには迫力さえ感じられます

村上さんは、この経験が長編小説「1Q84」の執筆につながっていったのではないかとも言われています

2013年01月28日

パイの物語

 年末からお正月にかけてたくさんの話題作が映画化公開されていますが、その中のひとつ「ライフ・オブ・パイ~トラと漂流した227日」  ボートの上でトラと向かい合う少年のスポットCMをテレビで見かけた人もいると思います。図書委員の中にも今一番のおすすめ作品として、図書日誌に紹介してくれた人もいました
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 もともと原作はパイの物語(Life of Pi)/ヤン・マーテル(竹書房)
その年に出版された最も優れた長編小説に与えられる、イギリスの文学賞であるブッカー 賞を2002年に受賞した作品です

 原作では、動物園を営んでいた一家が、動物たちとともにインドからカナダへ移住する途中、乗っていた日本の貨物船・ツシマ丸が嵐に巻き込まれ沈没。たった1隻しかなかった救命ボートに乗り、助かったのは動物園経営者の息子で16歳の少年、パイ・パテル。そのパイが話す物語です

 自分だけが乗ったと思っていたボートにシマウマ、ハイエナ、オランウータン。そして、リチャード・パーカーという人間のような名前(この名前にも意味が隠されている)のベンガルトラ。家族を亡くした悲しみに暮れる間もなく、命の危機をはらんだまま、わずかな水と非常食を乗せたボートは太平洋を漂流し始めます
 その状況に絶望しながらも立ち向かい生還したメキシコの地で、227日間の漂流生活をパイはどのように語ったのでしょうか
 美しく迫力のある映像が話題の映画ですが、原作では映画では使われなかったエピソードもあります。又、違った作品として楽しめるかもしれません

2013年01月24日

センター試験、おわる

受験生の皆さん、センター試験が終了しましたね、おつかれさまでした 
 翌日新聞に掲載された問題、国語は例年同様、評論・小説・古文・漢文から1問ずつ出題でした。新聞などを見ると、今回は国語の平均点が5割を切り、これまでより大きく下がったようです。特に、評論の問題 鍔/小林秀雄で苦労した受験生が多かったのではないか、と総評にありました
 小林秀雄さんは、論理的な文章で批判・評論を文学として確立。文学だけでなく美術や音楽などの分野でも独創的な評論を書き、社会に影響を与えた評論家の一人です
 早速、図書室にあった栗の樹/小林秀雄(講談社・現代日本のエッセイシリーズ)の中の何編かを読んでみました
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 昭和32年に書かれた「美を求める心」では、健康な耳や目を持っていさえすれば、見る事も聞く事も簡単にできる。でもそう簡単な事ではない。どちらも考えること同様、努力を要するのだ。ピカソの絵や道端のすみれの花、野球選手の選球眼などをあげ、見る事聞く事の重要さをまさに論理的に語っています。黙って物を見る事は難しい。多くの人はそれが何かわかると見るのをやめてしまうから。見てよくよく感ずる事は難しい。けれど、その行為は優しい感情をもつ事にもつながっていく
 簡単にまとめられませんが、きれいな日本語の骨太の文章です。試験問題としてではなく、全編でなくてもいいので、よくよく読んでみませんか?

 また、小説の問題になった 地球儀/牧野信一。引用されたのは、作中に主人公の創作した小説が出てくる部分。今日、図書室にやってきた受験生は「(作中作のセリフの一つにあった)スピン、スピンが頭の中から離れないです」と笑っていました

ともあれ、大きなハードルは1つ飛び越えました。あとまだもう少し、頑張っていきましょう

図書室も開室中は、授業利用がなければ自習可能です。もちろん気分転換でもOK。開室時間は↓
      月・水    12:35~18:00
      火・木・金 10:00~18:00
       土     10:00~14:00

2013年01月17日

直木賞・芥川賞決まる

第148回 直木賞・芥川賞の発表がありました

芥川賞は、黒田夏子さんの 「abさんご」
直木賞は、朝井リョウさんの「何者」(新潮社)、 安部龍太郎さんの「等伯」(日本経済新聞出版)の2作品

 黒田さんは「最年長75歳で受賞」ばかりが取り上げられていますが・・・「abさんご」は全文横書きで、句読点ではなく、. (ピリオド)と , (コンマ)を用い、固有名詞も片仮名も使わずに平仮名を多用した独特の文体スタイルの作品です。50代の親と思春期の子どもがいる家庭に家政婦が雇われたことで変化していく日常とその子どもの半生を描いたもの。雑誌・早稲田文学のフリーペーパー(WB vol.25)で、作品の冒頭部分が掲載されていて、ネットでも読むことができます

 安部さんの「等伯」は、桃山時代を代表する絵師、長谷川等伯の波乱の半生をたどった伝記歴史小説。上下巻の長編です

 一方、23歳の朝井リョウさんは、戦後、男性では最年少受賞者。早稲田大学在学中、「桐島、部活やめるってよ」(集英社)で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作や男子チアリーダー部を題材にした「チア男子」(集英社)など、図書室でもおなじみです
 卒業後も社会人として働きながら作家活動を続け、昨年は「桐島、・・・」が映画化。受賞作を含む3冊の小説と大学時代の体験をつづったエッセイ「学生時代にやらなくてもいい20のこと」(文藝春秋)も出版しました

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 「何者」は、就職活動の情報交換をきっかけに集まった5人の大学生の物語。どうして就職しなければならないのか、内定をもらうには何が必要なのか、など就活生の誰もがぶつかる悩みにくわえ、ネットやツイッターを使った現代の就活の様子を描いた青春小説です
 朝井さんは、子どもの頃から物語を書き続け、小学6年生ですでに文学賞に応募していたそうです。受賞インタビューでは「見たこと全部を小説に書くつもりで生きている」と話していました

2013年01月16日

深海

 世界最大の無脊椎動物と言われるダイオウイカ
1870年に発表されたSFの古典冒険小説 海底二万里/ジュール・ヴェルヌ の中でネモ船長の乗るノーチラス号が「巨人の体長をもつイカ」と対決するシーンは、執筆当時カナリア諸島沖でダイオウイカが発見されたという話をもとに、書かれました。伝説の巨大イカ『クラーケン』のモデルになったのも、ダイオウイカだそうです
 直径5㎝の吸盤、2本の長い触腕を含めると、全長18メートルになるものもいるそうです。でも、これまで生きてその全身を見ることができていませんでした
 それがとうとう、世界で初めて動くその姿をとらえることに成功。その様子が先日、NHKスペシャルで放送されました

 国立科学博物館の窪寺恒己博士や米国やオーストラリアなどから集まった専門家でチームを組み、もう何度目にもなる調査潜水が行われました。場所はもっとも生息する可能性が高いと思われる、世界遺産・小笠原諸島の海域、水深200メートル以上のトワイライトゾーンと呼ばれる所です

 340度の視界を持つドーム型潜水艇、超高感度カメラに、ダイオウイカのエサとなる深海生物の発光を真似た装置、ダイオウイカのフェロモンをばらまいたり、ライバルのマッコウクジラの頭に小型カメラをつけたり、それぞれの専門家が自慢の品を持ち寄り作戦を立てます。そして、その姿を目の前で見ることができたのが、40年来イカの研究を続ける窪寺さんだったのです
 潜水艇のライトも消した真っ暗な深海、我慢強く目を凝らしていた窪寺さんの目の前に、突然その巨大な足が!ライトを浴びて黄金に輝く身体、大きな目。TVでもその迫力が伝わってきますから、その出会いをずっと待ち焦がれていた窪寺さんの気持ちはどんなだったでしょう

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 深海にはまだまだ不思議な生物が多く生息しています。独特の姿をした深海魚や、過酷な環境で生きるために進化した生物。そんな生き物を集めた 
 深海/クレール・ヌビアン(晋遊舎)
 深海魚摩訶ふしぎ図鑑/北村雄一(保育社)
もちろん両方にダイオウイカも取り上げてあります。ただ残念ながら味は「苦くてしょっぱい」「歯ごたえなし」「海水びたしのスポンジみたい」 どうも美味しくなさそうですね

 宇宙に向かってはどんどん研究や調査が進み話題になるけれど、地球の内っ側(海の底)に向かっての研究はあまり話題にならないと聞いたことがあります(確かにスペースシャトルはニュースになっても、潜水艇のニュースは聞かない・・・?)
 でも、今回の放送は反響が大きかったようです。17日午前0:25(16日深夜)から再放送予定。見逃してしまった人、興味がある人はぜひチェックしてみてください

2013年01月12日

さむいあさ

 年が明けて、寒い日が続いています。今日も寒い朝でした

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 バムとケロのさむいあさ/島田ゆか (文渓社)

<かようびのあさ めがさめると はながつめたかった>

 こんな寒い日の朝は、きっと裏の池が凍っているはず!バムとケロは、さっそく釣り道具とスケート靴をもってくり出します。凍った池で二人が出会ったのは・・・ 
 ちょっととぼけたバムケロシリーズは、細かい所までこだわった挿絵が楽しめて、子どもから大人まで人気の絵本です

 おりしも連休明け火曜日の早朝から、寒稽古が始まりますね。しっかり寒さ対策をして登校、稽古に挑んでください!

2013年01月11日

レ・ミゼラブル 続

les%20miserables1.jpg せっかくなので、もう1冊
  レ・ミゼラブル百六景/鹿島茂(文藝春秋)
 自ら「レ・ミゼラブルのことは、日本で一番知っている
 人間の一人」と話すフランス文学研究者・鹿島さんに
 よる「レ・ミゼラブル」の解説書的な1冊
  19世紀当時の木版画230枚の挿絵を盛り込んで
 物語細部の解説はもちろん、当時のパリの様子や社会
 事情も書かれていて、歴史書ともいえます
 表紙になっている少女コゼットの絵は、ミュージカルの
 象徴的なポスターにもつかわれています 

 鹿島さんは、ユゴーがこの作品を通して訴えたかったのは
 「愛は確かに勝つ。でも愛というものは貰った分だけしか人に与えられない。愛を受け取ることのない『レ・ミゼラブル=みじめな人々』を救うには、誰かが見返りを求めない無償の愛を最初に与えなければならない。かつては、その誰かがイエスであった。イエス信仰の衰えた現代にあっては、その誰かがあなたなのだ」 ということではないかと書いています

 パンを一つ盗んだだけの罪で19年間囚人としての仕打ちを受け、憎しみだけで生きるようになったジャン・ヴァルジャン。彼は仮出獄中に、あることをきっかけに教会の神父から銀の燭台を与えられます
 「初めての愛」を受け取ったジャン・ヴァルジャンは心をあらため生きていく事を誓います。ただここで彼はキリスト教の伝道師としてではなく、施設の整った工場の経営者として更生していきます。そして、受け取った愛を貧困にあえぐ人々へむけて差し出します
 現代における「愛」は、雇用を作り出すことや働く喜びを伴った社会事業という形で実現されたのだと、鹿島さんはいいます
 そして、窮地にたたされたファンテーヌ、コゼット母娘にも救いの手を差し伸べます。こうして愛のリレーが始まっていくのですが、まだここでハッピーエンドとはならないんですね・・・
 ジャン・ヴァルジャンの囚人時代を知り、「一度罪を犯した者は永遠に呪われる。法こそがすべて」という、やはり愛を受け取ったことのないジャヴェール警部が執拗に彼を追いかけてくるのです

 貧困と格差にあえぐ民衆が自由を求めて立ち上がろうとしていた19世紀のフランスを舞台に、物語は大団円をむかえます
 原作、映画とも大作ですが挑戦してみませんか?

2013年01月10日

レ・ミゼラブル

 新しい年があけました。この1年がみなさんにとって良い年になりますように!
今年もブログや図書だより、カウンターでみなさんの読書の案内役をめざします
 
 今年の1冊目は何にしようかと思っていたら、始業式終了後、蔵書検索をしていた中学生(男子)に「レ・ミゼラブルはどこにありますか?」と尋ねられました。先月映画も公開されたばかり、彼も映画を観て「すごく良かった!」とのこと。さっそく文庫本で全5巻の作品を紹介したところ「・・・・」 大作なんです。結局、マンガ版もあるよというと、とりあえずとそちらを手にしていました
 その後、検索結果の残ったパソコンを見た別の生徒の「わあ、校長先生の話聞いて、さっそく探しに来てる!」という声を聞いて、始業式の校長先生の話でも話題に上がった事が判明、それでは図書室からも

 『レ・ミゼラブル』(Les Misérables)は、1862年にヴィクトル・ユゴーによって書かれた大河小説です。日本でも明治時代には、邦題「ああ、無情」として黒岩涙香によって翻訳されています。TVアニメ「少女コゼット」を見ていた人もいるのでは?
 図書室には、文庫版全5巻(新潮社)、海外児童文学作品シリーズ・上下巻(福音館書店)、マンガで読破シリーズ(イーストプレス)を所蔵しています

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 原作はもちろん、この作品はミュージカルでも有名。ロンドンやニューヨークでロングラン公演され人気があり、日本でも映画に続き春から舞台でも上演されます。歌われる曲もよく知られていて、『民衆の歌(The People's Song)』や、 数年前、話題になった英国の歌手・スーザン・ボイルが最初のオーデション番組で歌った『夢やぶれて(I dreamed a dream)』もこのミュージカルの曲です。もちろん上映中の映画でも歌われています
 映画は、子どもの頃から吃音に悩み英国史上最も内気な国王と言われたジョージ6世を取り上げた「英国王のスピーチ」で知られるトム・フーバー監督によるもの
「レ・ミゼラブル」は原作を知らずに映画を観る人もいるかもしれませんので、内容はこちらを参考に

 心の窓

校長先生のお話と一緒に紹介してあります