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2015年02月28日

中3生の印象に残った本

 連日、中3ブログに掲載されている 『印象に残った本』 コーナーを作りました。

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 いくつかコメントを紹介します。
鉄のしぶきがはねる/まはら三桃
    「ものづくりのおもしろさと奥の深さを感じる本でした」
*工業高校に通う女子高生が『高校生モノづくりコンテスト』に挑む様子を描いでいます。

永遠の0/百田尚樹 「人を感動させる職業ってすばらしいなあ」
*これは作家への言葉ですね。映画・ドラマ化されました。観た人も多いと思います。

春の雪/三島由紀夫
    「素敵な文章表現で、情景・風景を独特に表してあり、読んでよかったです」

ソロモンの偽証 全3巻/宮部みゆき
  「私たちと同じ年の人が命について語って裁判しているので判決が楽しみです」
*1人の中学生が学校で謎の転落死。ただ事態の収束だけを考える大人たちには任せられない。真相を知るために、クラスメイトが立ち上がり学校内裁判が開廷します。

一瞬の風になれ 全3巻/佐藤多佳子
 「楽しすぎて何度も読んだら、下がっていた国語の点数も戻って一石二鳥でした」
*それはよかった (笑)
   

2015年02月26日

2月の図書だよりから ③

 小学6年生の男の子3人組と近所に住む1人暮らしのおじいさんとの奇妙な交流を通して、彼らにとって『死』とは何かを考え描いた夏の庭(新潮社) で知られる湯本さんの短編集。

夜の木の下で/湯本香樹実 (新潮社)

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 交通事故にあい意識のないまま入院している弟。ケースワーカーに言われるまま臓器提供の意思カードを探しに弟のアパートを訪ねる姉。それぞれの独り語りで物語は進みます。
 弟の整頓された部屋でまどろみながら、最後に会った時にかけておけばよかった言葉を思い後悔し、出来るなら今からでも2人の運命を入れ替えたい、と強く思う姉。

 最後にあったときって、あの焼肉屋でしょう?弟はそう思いながら『あいだのとこ』から姉の様子を眺めている。『あいだのとこ』としか言いようのない「そこ」は、ずっと留まることが出来ない場所だって、ゆらゆらする意識の中なんとなくわかっている弟。
 そんな姉弟の意識を結びつけたのは、2人が子どもの頃にかかわった捨て猫。弟はそのキジ猫の事を思い、まどろむ中で姉はそのキジ猫に出会う。言葉を交わし、何かにひきつけられ、何かをつかもうと暗闇に手を伸ばす。姉がつかんだものはなんだったのでしょう。(夜の木の下で)

 理由が分からずいじめられるのはイヤだから、自分から正々堂々1対1の決闘を申し込む。それで負けるのは構わない、自分の意志で決めたことだから。
 いじめる側にいた俺が、その決闘を境にあいつの隣にいるようになった。そして、あいつが一番恐れていたのは、いじめっ子なんかじゃないことに気づいた時に・・・(リターン・マッチ)
 
 現在と過去、生と死、現実と幻想が自分の中で隣同士にある主人公たちを描いた6つの物語です。

2015年02月21日

2月の図書だよりから ②

 マレー語の『デュユン』(きれいな娘)が名前の語源とされ、絶滅危惧種でもある海洋生物・ジュゴン。ゆったりと泳ぐその姿や授乳する様子が人間の授乳を連想させることから人魚のモデルだと言われています。

  ジュゴンの上手なつかまえ方/市川光太郎(岩波書店) 

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 人魚はその歌声で船乗りを惑わせ、船を座礁させたという伝説があります。京都大学フィールド科学教育研究センター研究員の市川さんもその歌声に惑わされた一人。大学在籍中にひょんなことからジュゴンの研究を始めた市川さんのジュゴンの第一印象は「あらー、こんなにぶちゃいくなんや」 確かに、その容姿は童話で読んだ人魚とはちょっとかけ離れています。

 陸上で生活する私達が最もよく使う感覚は、目で見る事・視覚ですが、海の中になるとそれが音になります。水中生物は周囲の状況を得る手段として、音を出したり聴いたりする能力を発達させてきました。その結果、想像しにくいですが海の中は音であふれかなり騒々しいのだそうです。

 * ちなみに一番多いのはテッポウエビが爪をたたき合わせて出すパチンという音。
    ジュゴンの歌声を採取しようとすると、大量の天ぷらを揚げているようにパチ
    パチパチ。「なんやねん。もううるさいわ」となるそうです。

 それまで、世界にジュゴンの鳴き声を研究しているグループはなく、市川さんは世界でたった一人のジュゴン鳴き声研究者になりました。ジュゴンが生息が確認されているのは、紅海、アラビア湾、ニューカレドニアを始めとする38か国。市川さんはジュゴンの歌声を求め、世界に飛び出します。
 調査のためにジュゴンの背中に飛び乗ったり、右も左もジュゴンだらけのオーストラリアの海で「ここは天国か!」と思ったり、ホースでウンチを集めたり。

 「とにかく知りたい」という気持ちで、世界各地のジュゴン生息地で仲間たちとバイオロギングに取り組む市川さんは、本書を読む限りはかなり楽しそうです(もちろん大変な事も多いでしょうが)

 「で、鳴き声調べて何の役に立つの?」と思った人、生物のバイオロギング(行動追跡研究)に興味がある人は、一読を。
 あ。肝心なジュゴンの歌声は、「ピヨピヨピーヨ」だそうですよ。

2015年02月19日

2月の図書だよりから

 作家・江戸川乱歩生誕120年を記念して、昨秋よりポプラ社からオマージュ作品が出版されています。
 江戸川乱歩は、日本で初めての本格的創作探偵小説家と言われ、探偵ものから怪奇幻想、少年ものまで幅広いジャンルにわたり数多くの作品を残しています。
 本邦初のシリーズ探偵・明智小五郎VS怪人二十面相や小林少年率いる少年探偵団など、読んだことがある人もいると思います。

 子どもの頃それらの乱歩ワールドに夢中になり、影響を受けて作家になった人達もたくさんいて、今回紹介するポプラ社の『みんなの少年探偵団』シリーズを描いたのがそんな人たちです。

みんなの少年探偵団/万城目学・湊かなえ他、
 
 5人の作家が「少年探偵団と怪人二十面相との対決」をテーマに描いてくださいと依頼され出来上がった短編集です。両者が対決すること以外は決まりがないので、舞台がオリジナルと同時代だったり、その前後を描いたものだったり。なので、乱歩が書いた15歳の小林君が少年や青年、おじさんで登場します。
 父親の死をきっかけに、祖父と暮らし始めた双子の兄弟。一人は見たものを写真のように記憶でき、もう一人はいくらでも桁数の多い計算ができる特技を持っています。初対面の祖父から「実は自分は泥棒だった」と告げられ、興味を持った2人は・・・。もしかして、おじいさんが怪人二十面相?

 シリーズ2作目は、幻の宝石が使われた高価な首飾りをめぐって繰り広げられる明智小五郎と怪人二十面相の争奪戦(これは王道ですね)を描いた 全員少年探偵団/藤本治
 3作目は、明智小五郎・小林少年・怪人二十面相の生まれた経緯となぜ戦うのかを描いた少年探偵/小路幸也 以降続刊。

 もちろん乱歩のオリジナル作品もそろっています。
少年探偵団シリーズ全26巻(ポプラ社) 乱歩傑作選全20巻(東京創元社)
携帯電話やネットがなく、夜になると街中でも普通に暗闇があって、怪盗が潜むことが出来た時代。「ネットで検索だ!」とはいかない時代の探偵小説です。

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 必ず小学校の図書室には置いてあった、大人にはちょっと懐かしい装丁です。 
生誕120年を記念して発行された江戸川乱歩の迷宮世界(洋泉社) は乱歩作品が徹底詳解されています。

2015年02月17日

コンシェルジュという仕事

 様々な職種のプロにスポットを当て追いかける『プロフェッショナル~仕事の流儀』(NHK)という番組で、昨日『コンシェルジュ』が取り上げられていました。
 コンシェルジュ(concierge)とは、フランス語で「守衛、門番、管理人」という意味。大きなホテルを利用すると宿泊手続きなどをするフロント・デスクとは別に、コンシェルジュ・デスクが置かれています。多岐にわたりあらゆるサービスを提供するポジション、サービスの専門職が『コンシェルジュ』です。
 昨夜、登場したのは東京の高級ホテルでチーフ・コンシェルジュを務める阿部佳さん。以前、この人の本を買ったはず・・・と思い出したので紹介します。

わたしはコンシェルジュ~けっしてNOとは言えない職業/阿部佳(講談社)

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 阿部さんがコンシェルジュという職業を知ったのは、中学1年生の時に家族で訪れたヨーロッパのホテル。当時は老紳士が務めていることが多かったようで、その人たちにリクエストを出すと「魔法をかけたよう」に叶っていきます。
 例えば、同じ食事をするのも家族と行くのと仕事で利用するのとでは紹介するレストランが違います。阿部さんが「明日どこへ行こうかな?」と質問したら、その時の気持ちに一番しっくりくる場所を教えてくれます。
 どうして相手が何をしたいかわかるの?どうやって他人の気持ちを読み取って、しかもぴたりと当てることが出来るの?なんてすごくて不思議な職業なの?!阿部さんは、その時から「コンシェルジュになりたい」と思うようになります。
 そして阿部さんがどのようにしてコンシェルジュになったか、具体的な仕事内容、大変な事、心掛けている事、ホスピタリティの秘訣、なども紹介。もっと多くの人にコンシェルジュを知ってもらい、利用してもらいたいのだそうです。

 番組では「サムライに会いたい」「花火大会の見られる寿司屋に行きたい」「今日帰るのにパスポートを落としちゃった!」など、主に外国人へ対応する様子が取り上げられていました。相手と向き合うのではなく同じ方向を見る、無難な対応でなく前のめりに攻める、アグレッシブな阿部さんのもとには、現在1日300件を超える依頼が寄せられます。
 去年、日本を訪れた外国人観光客は、過去最高の1,341万人。2020年東京オリンピックに向けて、今後ますますその数は増えるでしょう。外国語はもちろん、コミュニケーション能力、想像力を生かした仕事です。興味を持った人は読んでみてください。番組の方も20(金)に再放送予定のようです。

2015年02月06日

ひばりの図書室2月号、配布しました

        本日、ひばりの図書室2月号、本日配布しました。

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 今月の新着図書は・・・・
第135回直木賞受賞作 サラバ!/西加奈子(小学館)
 テヘランで生まれた男の子・歩の波乱万丈の半生を描いた、西さん初めての上下巻2冊の長編小説です。
 父親の仕事の関係で、テヘランで生まれ、大阪→へエジプト→大阪・・と数年で生活する境遇が変わってきたという著者の西さん。 主人公の歩は個性的な両親と姉に囲まれ、西さんと同じ境遇をたどり、それぞれの場所で同じ社会的、歴史的な出来事に遭遇していきます。

ドラマ『マッサン』関連の本が人気なので、2人の生涯を描いた
 リタの鐘が鳴る/早瀬利之(朝日新聞出版)
 ヒゲのウヰスキー誕生す/川又一英(新潮社)
 の2冊を購入しました。

2015年02月03日

Take Action

 先日、高3のKさんが本を返しに来て「ここへ行ってきたんです」と言います。
 返却された本は 夢の病院をつくろう~チャイルド・ケモ・ハウスができるまで/NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス(ポプラ社)
 話を聞いているうちに「ブログで紹介してみない?」と提案しました。 
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 医療福祉関係の本を探しているときにこの本に出会いました。
チャイルド・ケモ・ハウス、通称チャイケモは簡単に言うと、小児がんの子どもたちとその周りにいる家族がまるで家にいるかのように、落ち着いた環境の中でできる限りストレスや不安がないように治療ができるクリニックのことです。
 この本は1人の男の子が家族や周りの方とチームを組み小児がんと闘う日々を綴っています。またチャイケモができるまでの取り組みについても書かれています。
 私はこの本を読んで小児がんとは決して遠い存在ではないこと、入院生活が子どもや両親にとってどれほど苦しいかを知りました。

 数日後、偶然テレビでチャイケモについて取り上げられた番組を見て、今できている当たり前の生活が幸せなことだと痛感し、病気の治療以外の苦しさをできる限りなくしてあげたいと強く思いました。
 そしてチャイケモのボランティア説明会に行くことを決めました。チャイケモに行ってみると、小児がん経験者の方やその家族の方があったらいいなと思っていたアイディアがたくさん採用され、それに協力してくれた企業や大学もたくさんあることを改めて知り、これほど多くの人がチャイケモの建設に関わっていると知り驚きました。
 例えば泣ける場所や料理をする姿が見えるキッチン、夜遅くに来たお父さんがそのまま部屋に入れるように作られたドア、自らしたくなるマスクがあります。もちろん守らなくてはいけない規則もあります。
 しかしその中でも前向きに明るい、温かい病院を創っていこうという1人1人の思いをとても感じる場所でした。チャイケモはまだまだ生まれたばかりでこれからもっと、小児ガンの理解と共に支援の輪を広めていく必要があります。
 私はこれからチャイケモのボランティア活動を通じて、今普通に生活できている人にもチャイケモの存在を知ってもらえるきっかけ作りをしていきたいです。
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 Kさんはすでに進路が決まっていて、地域保健学の分野で教育福祉学を学ぶのだそうです。本の内容もですが、私が印象深かったのはKさんの行動力。テレビで見て興味を持った場所が近くだった、ホームページを見たらどうやらボランティアを集っている、説明会に行ってみよう。
 関心のある事にアンテナを張ってキャッチしてアクションを起こす。(しかも一人で) 「やってみたいなあ」と思う人は多いかもしれませんが、「又、いつか、ね」と思ってしまいがち。フットワーク軽くアクションを起こせるのって、いいなと思います。私も見習わねば!

 *チャイルド・ケモ・ハウスは、神戸のポートアイランドにあります。