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2016年04月19日

感動三つ、これぞ雲雀丘

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校庭の大銀杏も新緑の装いを始めてきました。芝生も青さを増してきました。新高校1年生の「オリエンテーション合宿」、新中学校1年生の「自然学舎」宿泊研修を終えたばかりの生徒もまじって、校庭の昼休みはバレーボールやドッジボールに興じる生徒の声が飛びかっています。

 先週金曜日、こんなことがありました。朝の1限目の授業が始まるので、ある理科の先生が実験器具の試験管やフラスコをトレーに乗せて階段を下りてきました。その時、下の方から階段を上ってくる女の先生と出くわすことになりました。体を避けようとしたところ、誤って試験管数本を落としてしまい、階段にガラスの破片が飛び散りました。危ないのですぐに掃除に取りかかりました。

 ちょうどその時「先生は早く授業に行ってください。私がやります」と言いながら掃除の役を買って出たのが用務員の方でした。理科の先生は人任せにはできないと思いながらも、すぐに授業開始のベルが鳴るので「ごめんなさい。申し訳ない」と言いながら教室に走りました。心で手を合わせていました。用務員さんは一つ下のフロアにいましたが、かすかにガラスが割れる音を聞き駆けつけて来たそうです。そして、ほうきと掃除機できれいにあとかたづけをしました。

 次に理科の先生です。始業にはぎりぎり間に合いませんでした。生徒に遅刻をわびたあと、こんなことを言いました。「雲雀丘はすごい学校。君たちは幸せです。感激した。授業を大切にしなさいという心がみんなに行きわたっている」と言って出来事の経緯を説明しました。そして「もとはと言えば私の不注意。しかし申し訳ないという気持ちより、今は心は高ぶり、皆に一生懸命教えなければという気持ちでいっぱいです」と話しました。

 生徒は静かに先生の話を聞いていましたが、やがて自然と拍手がわき起こりました。今日の実験は都合で化学教室を使えず、通常の教室に実験器具を持ち込んでの授業でした。昨今は手間と時間のかかる実験を避ける学校が多いように聞きます。先生はどうしても実験で鮮やかに色が変わる過程を生徒に見せてやりたかったそうです。

 雲雀丘学園の目指す教育がここにあります。

2016年04月15日

失敗と挑戦

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枯れ木色だった五月山が黄緑やうす紅のパステルカラーに装いを変えてきました。五月山は私の住まいから東に見えます。春の山は笑うといいますがこの頃をいうのでしょうか。昔、学校で「春はSPRINGというがSPRINGには泉やバネの意味もある」と教わりました。自然界にも人の心にも活力が満ち溢れてくる季節です。

今週始め、高1の「オリエンテーション合宿」が大阪アカデミアで行われました。これは、スムーズに高校生活をスタートさせるため、必要な心構えや、高校での学習姿勢や、学習方法を学ぶために実施されるものです。私も327名の新しい高1を前に話をしました。

入学式で親孝行の話をしましたので、今回は「やってみなはれ!(挑戦)」についてです。
雲雀丘学園の創立者の一人である鳥井信治郎は常々「やってみなはれ!やってみなわからしまへんで」と話し、周りの人を鼓舞していました。自らも「やってみなはれ」精神そのままの人生を送りました。100人が100人反対したといわれる日本でのウイスキーづくりに挑戦し、世界5大ウイスキーの一つに育て上げました。創業したサントリーは今や2兆6千億円の売り上げをほこる会社に成長したのです。

雲雀丘学園は「やってみなはれ精神」を大切にし、生徒に目的を持ちそれを達成することを教えています。困難に挑戦することで人間は大きく成長することを伝えたいからです。たとえ失敗してもいい、むしろ失敗を重ねることが将来の飛躍のための血となり肉となることを鳥井信治郎は言いました。今年の新入生のうち100名余りは他校の受験を落ち、雲雀丘学園に合格した生徒です。私はその生徒に「君たちは貴重な経験をした。悔しいかもしれないが失敗をバネにして雲雀丘学園で大きく成長しよう」と激励しました。

ある生徒の感想文です。「挑戦ってすごいなと思いました。私の中学校の先生が卒業の前に宿題を私たちに出しました。『幸せになりなさい』という宿題でした。私は高校受験に落ちて、まだ気持ちが整理できていません。でも校長先生の話を聞いて、その宿題を思い出し、先輩を見て幸せそうだったので、しっかり気持ちを切り替えて、雲雀で幸せになれる道をさがしていきたいと思います」。

今年の企業の入社式でトヨタの豊田章男社長は次のように新入社員に話しました。「世の中はどんどん変化しており、行く道は前例のない道。失敗を恐れず勇気をもって挑戦してほしい」。東京工業大学の三島学長は「自分の将来を見据え、積極的に様々な能力を身につけ、より高い目標に挑戦し続けてほしい」と話し、いずれも挑戦を求めました。

雲雀丘学園中高等学校は、挑戦することの大切さを教える学校でありたいと思います。

2016年04月08日

伸び代のある生徒を育てたい

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4月8日、午前と午後に分かれて中学校と高等学校の入学式が学園記念講堂で行われました。前日は宝塚市に暴風警報が出され雨も激しく降りましたが、当日はすっかり上がりました。ただ正門のソメイヨシノの桜は多くは散ってしまい名残りの桜となりました。今年は中学校172名、高等学校327名の新入学生を迎えることになりました。

 入学式が始まる前には玄関でギターマンドリンクラブが新入生歓迎の演奏をしてくれます。前月、同部は創立50周年の記念コンサートを開いたばかり。兵庫を代表するクラブの演奏だけに大勢の参列者が聞き入っておられました。因みに式の最後は本校吹奏楽部が迫力ある演奏を聞かせてくれました。

 さて式が開始されると、担任の先生から入学者の点呼が始まります。私は一人ひとりの顔を確かめながら、新入生が健康で明るい学園生活を送ってくれるよう、念じていきます。そして最後に、「中学校は172名、高校は327名の入学を許可します」と宣言します。気が引き締まる瞬間です。

 今年の新入生は中学、高校とも激しい競争を勝ち抜いての入学となりました。中高とも受験者が昨年の5割増になったからです。新入生には、難関を経ての入学に「よくやった」の祝福を送りたいと思います。また入学までいろいろご心配された保護者の皆様にも、まずは「ご苦労様でした」の声を届けたいと思います。しかし3年後、6年後には大学受験という大事業が控えています。保護者との「共育」の精神で共にがんばっていかねばなりません。

 高校の入学式で私は新入生に「3年間の高校生活を謳歌しろ」と言いました。3年間に色々なことを経験・勉強してほしいからです。もちろん、勉強することは基本でしょう。しかし大切なことは健康な体と心を作ることだと思います。そのために勉強のほかに、クラブ活動や行事への参加をしっかりやってほしいとも言いました。

 高校3年間は大学受験のための3年間ではありません。社会に貢献し、自らは豊かで幸せな人生を送ってもらうための人間的成長の期間だと思います。受験のためにすべてのエネルギーを使い果たしてしまう、大学生燃え尽き症候群にしたくはありません。雲雀丘学園の卒業生は大学生になっても、社会人になっても伸び代のある生徒を育てたいと思っています

2016年04月03日

挑め、燃えろ、新しい人よ。

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雲雀丘学園のソメイヨシノが満開になりました。事務局の前のしだれ桜が傘のように垂れ下がり春の風にゆっくりとたなびいています。学園も新年度を迎えました。今日4月1日は、朝からスケジュールが目白押しです。辞令交付に始まり、新任式、永年勤続表彰、合同職員会議、校種の分かれての職員会議、分掌・学年・教科の会議などが夕刻まで続きます。

 雲雀丘学園では今年13名の教職員にお越しいただきました。新任式で私は学園の常務理事を兼任していますので、歓迎と激励の挨拶をしました。13名には新卒の先生から教頭を務められたベテランの方まで、校種も幼稚園、小学校、中高の先生と実に多彩です。私はどんな話をしようかと迷っていました。

 毎年、4月1日にはサントリーが新社会人向けに激励のメッセージを掲載します。広告ですが何十年も続いているもので、かつては山口瞳さんが、現在は伊集院静さんが執筆されています。新社会人に対して、社会人としての心構えを人生の先輩として説きます。私も毎年楽しみにしている広告です。先生方に対してどうかなとは思いましたが、書かれていることは、新年度を迎える全ての人に共通することだと考え、歓迎の挨拶に伊集院さんのメッセージを使わせていただきました。

 こんなことが書かれています。
「人間は誰でも、身体の中に、火をおこす石のかけらを持っている。働くとは、その石を打ち続けることだ。仕事とは、その火をかたちにすることだ。その火は、人々に希望を与え、こころをゆたかにするんだ。」
「新しい発想、力は、挑戦する中にしか生まれない。挑め、失敗してもあきらめるな。さらに挑め。」

 雲雀丘学園初代中学高等学校長の板倉操平先生は「生徒の心に火を点ずる授業」をするように先生方に話されました。生徒のやる気を喚起することこそ、教育の原点だと喝破されたのです。また挑戦する心は雲雀丘学園の創立者、鳥井信治郎先生が日ごろから「やってみなはれ」、すなわち挑戦する大切さを尊び、数々の大事業を成功させ、日本にウイスキー文化を花咲かせました。

 13人の教職員の方々が、ここ雲雀丘学園で、いきいきと明るく、豊かな人生を送っていただくことを願っています。   
 「新しい人よ、君に乾杯。」