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「知る」ことの大切さ

  私の好きな書物の一つに古代中国の兵法の書である『孫子』があります。この書物には戦いに勝つための戦略や戦術が詳しく叙述されており、経営のあり方を考える際に時々紐解いています。しかし、この書物が長い間多くの人に愛読されているのは、単に戦いに臨んでの心構えというだけではなく、人間学についてさまざまなことを説いているからではないかと思います。つまり、人生をいかに生きるかを考える際に参考となる数々の味わい深い言葉が記されているのです。
  この中で、特に有名なのは「知る」ということの大切さについて述べられた「彼を知り己を知らば、百戦して殆(あや)うからず」という言葉です。この意味は「相手を知り、自分をよく知っていれば、物事はすべてうまくいく」ということです。そして、この相手というのは必ずしも人間とは限りません。
  本校では〝将来社会で役立つ人材の育成〟を教育方針に掲げており、先日の入学式後の新入生保護者オリエンテーションや高校1年生の宿泊研修等を通じて「社会で役立つ力」というテーマで話をしてきました。しかし、社会というものがしっかりと認識されているかどうかは疑問です。この認識なしに、〝将来社会で役立つ〟ということを取り上げても、具体的に何をすれば良いのかは目に見えてこないと思います。
  従って、まず現在の日本や世界の現状がどのようになっているかを知り、次にこれからどのように変わっていくのか、更にこの社会ではどのようなものが必要になってくるのかを予測して自分なりに把握しておくことが必要です。
  そのため、これから何回かに分けて、現在と将来の社会について詳しく説明していきたいと考えています。