先輩方から新入生に読まれた詩です
せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ
すずな すずしろ
春の草のことなら
なんでも知ってる 春の土
はぎ をばな くず おみなえし ふじばかま
ききょう なでしこ
秋の草のことなら
なんでも知ってる 秋の土
わたしもなりたい
春秋をゆたかにかかえた
ふところの大きい土に
美しい日本の詩歌⑲ 新川 和江詩集 地球よ 岩崎書店より
名づけられた葉
ポプラの木には ポプラの葉 何千何万芽をふいて
緑の小さな手をひろげ いっしんにひらひらさせても
ひとつひとつのてのひらに 載せられる名はみな同じ
| わたしも | だからわたし |
| いちまいの葉にすぎないけれど | 考えなければならない |
| あつい血の樹液をもつ | 誰のまねでもない |
| にんげんの歴史の幹から | 葉脈の走らせ方を |
| 分かれた小枝に | 刻みの入れ方を |
| 不安げにしがみついた | せいいっぱい緑をかがやせて |
| おさない葉っぱにすぎないけれど | うつくしく散る法を |
| わたしは呼ばれる | 名づけられた葉なのだから |
| わたしだけの名で 朝に夕に | 考えなければならない どんなに風がつよくとも |
新川 和江詩集 より