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「赤線」つきの参考書

—「親切な教材」か 「不親切な教材」か —

みなさんの手元にある問題集や参考書は,重要な箇所に「赤線」が引いてないだろうか。一見,ポイントがはっきりしていて効果がありそうに思える。しかし,実際はどうなのだろうか。

「重要なところに赤線が引かれている参考書は、私には信じられないものだ。自分で赤線を引くことが勉強だと思ってきたからだ。もちろん、赤線付き参考書は確かに手間がなく便利かもしれない。そこだけをきちんと覚えれば高い点数を取ることができる。
だが、そうして手軽に勉強することが脳の発達に良いことだろうか。本来の勉強は、自分で重要と思われる部分を探し出し、そこに自分で赤線を引くことで目的が果たされるのではないだろうか。」(三木光範 同志社大教授,『産経新聞』6月21日朝刊)

三木氏の指摘には「ギクリ」とした。本校で使用している問題集には分厚い別冊解答がついている。教科書の例題には,注意すべき箇所も示してあり,実にカラフルだ。数年前,教科書のフルカラーが「解禁」されてから,親切な教科書が増えた。中学校では,さらに彩り鮮やかな頁が目に飛び込んでくる。ポイントを教えてくれる”キャラクター”まで大活躍だ。

先日,大学入試問題を作成した先生の話を聴く機会があった。その場で,数式の書き方(記号の使用法)の誤りが話題に上った。ある大学の先生は「親切すぎる教材を与えすぎて,生徒(受験生)が自ら考え,意味を考えながら数式を書いていないのではないか」と,原因を指摘した。われわれ指導者は,親切な教材に頼り切って生徒の誤りを細かく指摘することを忘れていたのではないだろうか。

期末考査が終われば夏期講習のテキスト準備が始まる。今年は思い切って,頁に問題文が数行の「不親切なテキスト」に挑戦してみようか。そして,そのテキストを講義でどれだけ親切なテキストに変化させることができるか―。指導者の腕が試されるところだ。(寿)