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こんな本を読んだ ⑥

 国語科で中2B担任、図書係でもある岩瀬先生が、夏休みに一目ぼれをした。
じゃなくて、こんな本をよんだ。

ある小さなスズメの記録/クレア・キップス著 、梨木香歩・訳 (文藝春秋)

 書店で一目ぼれして購入した本です。
まず美しい装丁に目をひかれます。柔らかなクリーム色の表紙、そこに書かれたかわいらいいスズメのイラスト、そして鮮やかな赤い帯。作り手の本への愛情を感じます。

 第二次世界大戦下、夫をなくしたある老ピアニストが生まれたばかりの一匹のスズメと出会います。スズメはクレランスと名付けられ大切に育てられます。クレランスは、キップス夫人を親のように慕い、ヘアピンやトランプで遊び、毛布にくるまって眠り、さらにある特異な才能を開花させます。
 その特技は戦時下の人々の心を慰め、勇気づけるようになりますが……、その特技が何であるかは、本を読んでたしかめてください。

 この本には、自分の大切な存在への接し方が書かれています。それは、とにかく一緒にいて、相手のことをよく見てよく聞いて、そして丁寧に接するということ。
小さなスズメと人との間に生まれたたしかな信頼、それは奇跡のような交流です。
 この物語に触れた人は、きっと心が温かくなることでしょう。本を読むことの悦びを思い出させてくれる本だといえます。

 訳者は「西の魔女が死んだ」の梨木香歩さん、解説は「博士の愛した数式」の小川洋子さんです。そして表紙のかわいらしい絵は酒井駒子さん(荻原規子さんの「レッドデータガール」の表紙の絵の人です)によるもの、ここまでくれば文句のつけようがありません。 皆さん、ぜひ手に取って読んでみてください。

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   中には、実際にトランプで遊んだり、毛布にくるまるクレランスのモノクロ写真も。 
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 岩瀬先生が赤い帯に魅かれて手にしたのは文庫判です。
 図書室にあるのは単行本でブックケースに入っています。このケースのデザインがそのまま文庫本の表紙になりました。