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申年ですから、孫悟空

 今年は申(さる)年です。

 猿で、小説、といえば、西遊記/呉承恩。 花果山の石から生まれた孫悟空。
猪八戒、沙悟浄と共に、唐の国からはるばる天竺へ経典を取りに向かう三蔵法師を助け冒険の旅へ・・・。日本でも古くから親しまれている中国四大奇書の1つです(あとの3つは「水滸伝」「 三国志演義」「金瓶梅」)

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  西遊記はダイジェスト版で伊藤貴麿訳の全3巻と、中野美代子訳の全10巻(共に岩波書店)があります。 

 そんな西遊記を、脇役にスポットをあてたのが中島敦です。教科書で彼の作品山月記を読んだ人も多いでしょう。

 旅の合い間のひと休み、悟空が八戒に変化の術を教える場面から始まります。
「いいか、ほんとうに、ほんとうに龍になりたいって思うんだ。本気の本気にだそ、やってみろ!」と悟空に言われた八戒 「よし!」と目を閉じ印をふみますが、姿が消えて現れたのは、残念、青大将(へび)。「ばか!」と悟空。何回やってもうまくいかない八戒に、「気持ちが足りないんだよ」と悟空。
 そんなやりとりを笑って眺める悟浄が、「悟空は確かに天才だよなあ・・・」と悟空と三蔵法師について、ただひたすら考える『悟浄歎異』

 もう1編は、旅に出る前、まだ川の底で暮らしていた悟浄がうじうじ悩む様子(「俺は堕天使だ!」とか言ってます)を描いた『悟浄出世』 
 どちらも、中国小説集/中島敦(ランダムハウス講談社) に収録されています。

 そんな短編2作を読んで「めちゃくちゃ面白い!」と思ったのが、「鹿男あおによし」「プリンセス・トヨトミ」で知られる高校生だった頃の万城目学。後に作家になった彼が、注目されなかったもう一人の旅のメンバーである猪八戒について描いた短編が悟浄出立(新潮社)です。
 併せて読んでみてはどうでしょう。