震災から5年
今年も3/11がめぐってきました。東日本大震災から5年たちますが、現在も2561名の方が行方不明で(3/7現在)、捜査活動が続けられています。
仙台在住で震災を体験した直木賞作家の熊谷達也さんは、震災以降、宮城県気仙沼市をモデルに仙河海(せんがうみ)市を舞台にした一連のシリーズを手掛けてきました。
出版社の人から言われた「震災前の風景を知っているのは熊谷さんだけ」という言葉に背中を押され、毎回時代も主人公も違う物語で、東日本大震災以前の日常を描いてきました。今回は高校生を主人公に大好きな音楽と故郷、恋を描いた青春小説です。そして初めて震災時の様子を描いたシーンが登場します。
ティーンズ・エッジ・ロックンロール/熊谷達也(実業之日本社)
友人と組んでいたバンドが解散してしまった高校2年生の匠は、ギターを続けるため、それまで馬鹿にしていた高校の軽音楽部の扉をたたきます。そこで出会ったのが、思ったことをはっきり口にするけれど魅力的な先輩・遥。
あっという間に遥に恋をした匠は、彼女の考えに刺激され、今、自分のやりたいことは何か思い巡らせます。そして、この町に高校生が練習したり、気軽にライブをやれる場所をつくるという目標を見つけます。
「この町に足りないものを自分たちで創る」ことを決めた2人は、地元の仲間や先輩を巻き込み、周りの大人たちからも見守られ、夢は実現されるのですが・・・。
ラストシーン、大津波に襲われ大切な場所や思い出の場所を失い、現実を目の当たりにしながらも未来を思い描く2人の姿が力強いです。