ノーベル賞受賞の原点
先週末、ストックホルムでノーベル賞の授賞式が行われ、ノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さん(東京工業大学)も出席されました。
そんな大隅さんが科学者を志す原点にもなったと言われる本が話題です。電磁気学で知られるイギリスの科学者マイケル・ファラデーの ロウソクの科学 です。
この本は多くの出版社から発行されています。写真は岩波書店のもの。
これは、1861年の年末・年始に行われた、少年少女のためのクリスマス講演(全6回)の講義録。深い知性と科学への愛情に溢れるファラデーの講演は、当時、貴族から一般市民までを魅了したそうです。
沈没船から引き上げられた海水びたしのロウソクに火を付けて見せたり、蜜蝋のロウソク、そして日本の和ろうそくまで、実物を見せながら化学と物理の本質的なプロセスを実験し解説。ただあくまでも対象は少年少女ですから、楽しく易しく丁寧に語っている様子がうかがえます。
そしてこれは、160年あまり前の講演。写真を撮ったり、電気をつけたり、という現在では日常的な事が、当時の子どもたちには「話には聞いていたけれど、経験したことがない」ことばかり。それを実際に体験できるって、どんなに興奮したでしょう。
後にこの本は、世界各国の初等・中等理科教育の教材の役割を果たします。
ただ、科学技術が進歩した現在、その役割は科学知識のソースとしてではなく、科学的精神とは何かを子ども達に伝える役割へと変化しています。
この本を何度も繰り返し読んだという大隅さんは
「人がやっていないことをやる方が楽しい」「チャレンジするのが科学的な精神」「疑問をもつことを、いつでも忘れないで欲しいと」語っていました。