第157回直木賞
先日、第157回直木賞が決定しました。今回の受賞作品は 月の満ち欠け/佐藤正午(岩波書店)です。
もし自分と深く関わりのあった人が亡くなった後、まったく別の人の姿で目の前に現れたら、それを受け入れられるでしょうか。自分達しか知りえない思い出を、全く見ず知らずの人物が自分の事のように話し始めたら。
東京駅のティーラウンジで、初老の男性と小学生の女の子が過ごした3時間ほどの物語です。でも、初対面の2人が語り合ったのは(というか一方的に8歳の少女が男性に語り続けたのは)、自分がこれまでめぐってきた数十年にもわたる物語でした。
「輪廻転生」という言葉があります。仏教語で、車輪がぐるぐると回転し続けるように人が何度も生死を繰り返し、生まれ変わるというような意味です。
この作品は月が満ち欠けるように、生と死を繰り返し、想いを残した人に再びめぐり合うことを願い続けた一人の女性の物語です。