修学旅行コーナーから1冊
深夜特急/沢木耕太郎 (新潮社)
26歳の「私」はある日、インドのデリーからロンドンまでバスで旅することを思い立ちます。仕事をすべて投げ出して、部屋を整理して、ありったけのお金をかき集めて(引き出しの中の1円玉まで)
その思いつきを話した友人たちはこぞって無理だと言いますが、「私」は絶対無事にロンドンに就いてゴールの知らせの電報を打つと宣言して東京を旅立ちます。それは結果的に長い長い旅になります。
ゴールはロンドン、移動手段は乗り合いバス、それ以外はノープラン。少しずつ陸地を伝ってユーラシアを旅してみたい、地球の大きさを知覚する手がかり得たい、そう思って旅した沢木さんの実際の旅の記録です。
携帯電話もスマートフォンもない30年も前に決行された旅ですが、今でも幅広い世代に読み続けられています。1巻で東京~香港・マカオ、そして2巻でシンガポール・マレー半島へ渡ります。
旅に出たからといって何かが見つかると決まったものでもないし、帰ってからのことが予測できるはずもない。何の意味もなく、誰にでもできて、でも普通の人はしないようなことがしたかった。ただ執行猶予の時間が欲しくて旅に出たのかもしれない。そんなふうに沢木さんはこの旅のことを語っています。