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中学生に読ませておきたい本 1

 中学生の素養としてぜひとも読んでおいて欲しい文学作品があります。ところがたくさん本を読むお子さまでもさらっと読めてしまうようなライトノベルばかりを読んでいることがよくあります。確かに本を読んでいる時間は長いし、たくさん本も借りていますが、あまり力はつかないでしょうね。スポーツと一緒で、負荷をかけずに練習している状態では実力養成にはなりません。読ませておきたい文学作品は古典的な名作を選んでいます。読み終わった後で心に何か残るようなら読む価値もあるというものです。

 最初に紹介する作品は、明治から大正時代に活躍した文豪、森鷗外の短編集です。「山椒大夫」「高瀬舟」「阿部一族」「最後の一句」などはどこかで耳にしたことのある作品だと思います。短編ですから、比較的短時間で読み切りやすいです。鷗外が晩年期に書いた作品はどれも簡潔で力強い文体です。ライトノベルのように簡単にハッピーエンドにはなりません。「高瀬舟」では弟殺しの罪に処せられた男の心情を綴り安楽死の問題を投げかけてきますし、安寿と厨子王で有名な「山椒大夫」は家族愛や兄弟愛を描いた作品です。「最後の一句」で少女が投げかける「お上の事には間違いはございますまいから」という一言にはドキリとさせられることでしょう。鷗外の作品に興味が持てれば「舞姫」も井上靖の現代語訳でいいですから、ぜひ読んで欲しい作品です。A.M.