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中学生に読ませておきたい本 10

 今回紹介する作品は井上靖の「天平の甍」(てんぴょうのいらか)です。井上靖の作品はドラマや映画の原作として使われることが多いですから、知らず知らずのうちに触れていると思います。昨年、NHKの大河ドラマとして放送されていた「風林火山」は井上靖生誕100周年を記念して制作されたものです。そのほか「敦煌」「千利休 本覺坊遺文」「おろしや国酔夢譚」などが映画化されています。

 「天平の甍」は鑒真来朝という天平時代の史実を元にして、極限に挑み木の葉のように翻弄される若き留学僧たちの運命を描いた歴史小説です。故国の便りもなく、無事な生還も期しがたい状況の中で在唐二十年の放浪の果てに、高僧「鑒真」を伴って故国の土を踏むことができたのは主人公の「普照」ただ一人でした。しかし彼は、東の果ての島国に仏法を伝えるために不帰の覚悟で海を渡った「鑒真」,「鑒真」招来のために命を賭けた「栄叡」,人生の全てを日本に送るための経典の書写に捧げた「業行」など多くの人々の理想や意志を受け継いでいたのです。
 1300年以上前に生きた人々の熱き思いが、若い中学生である君たちにもきっと伝わってくることだろうと思います。これから先の人生の中で、熱くなれる何かを見つけて欲しいなと思います。A.M.