生きる力をつけさせるために⑩
畑村洋太郎さんの「みる わかる 伝える」から、「わかる」の二回目です。授業をしていると生徒から「わからない」というメッセージが言葉で、あるいは目線のような言葉以外の方法で伝えられることがよくあります。また、授業中はわかったように振る舞っているのに、実はわかっていないということもよく見受けられます。「わかる」ということを「知っている」と誤解するために起こることのようです。
外部から受け取った知識と結果を参照して一致点を見るだけのパッシブ型学習では、たくさんの知識を持っていて対応する結果を引き出せる人:「物知り」が頭の良さを表していました。だから、勉強という活動はたくさんの知識を取り込むかだと勘違いしてしまうことにつながっているのだと思います。覚えられない=勉強ができない、と単純に判断してしまっているお子さまもいます。
しかし世の中が求めているのは、アクティブ学習ができる人です。まず行動が先にあって、失敗を含めたたくさんの経験の中でどの知識が不足していたのかを実感してから、知識の吸収をおこなうことができるかどうかが求められています。学習とは、自分の中にモデルを作り、トライアンドエラーの中でその知識に対する思考回路をつくりだす作業のことなのです。
では知識は必要ないのか。それは間違いだと思います。自分の中に知識がまったくない状態ではモデルをつくることはできません。ただ覚えるだけで脳の中に死蔵させてしまっているのは、意味のないことですし、それでは意欲的に取り込もうとはしないということです。「勉強は大変」「大人になったらしなくていい」といった印象だけをお子さまに持たせてしまうと、積極的に学習することは難しくなってしまいます。私たち大人自身が日々学習している姿勢をお子さまたちに見せていく必要があるのではないでしょうか。A.M.