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選特化学 授業の補足34

 前回は天然ゴムの説明で終わってしまいましたので続きです。

 天然ゴムは東南アジアのプランテーションで作られていました。そのため第二次世界大戦に突入するとアメリカやヨーロッパではゴムの不足が問題になりました。このあたりの事情は絹とナイロンの関係に似ていますね。イソプレンを重合させて合成ゴムをつくるときの課題は二重結合にありました。天然ゴムは酵素によって合成されるためすべてシスであるのに対し,制御なしに合成した場合はシスとトランスがランダムに混じったものができてしまいます。

 解決するための技術は2つでした。一つは第一次世界大戦で同じ状況にあったドイツで考えられていました。これがSBR(スチレン・ブタジエンゴム)です。スチレンは1866年に化学合成できるようになっています。この技術がアメリカで分析され,合成ゴムの製造は急速に進みました。1945年には生産量が80万トンに達し,ゴム消費のほとんどを占めるまでになりました。

 もう一つは1953年にツィーグラーとナッタによって考えられたツィーグラー・ナッタ触媒の開発です。これによってシスあるいはトランスの二重結合を狙い通りに作ることができるようになりました。この技術開発によって天然ゴムが人工的に合成できるようになっただけではなく,ポリマー合成がコントロールできるようになりました。この触媒はポリエチレンの合成でも出てきました。二人は1963年にノーベル化学賞を受賞しています。