第3回慶應義塾大学連携講座の開催
7月23日(月)、第3回目となる慶應義塾大学連携講座を開催しました。
今回の講師は井庭崇先生でテーマは〝共感を生むメカニズム 現代社会と物語〟です。生徒達には事前に自分の心に響いた3曲を選んで提出してもらいましたが、重複したのは二つの曲(一つは三人、もう一つは二人)だけで、ほとんどが一曲ずつという結果になりました。
講義の前半は実際にこれまでヒットした歌を聞きながら、その歌詞の中に共感を引き出すさまざまな工夫があるということを学びました。ミクロ編(個人レベル)では、≪私達は歌詞のどのような点に共感し、作り手はどのようにそれを作り込んでいくか≫、そしてマクロ編(社会レベル)では、≪社会の中でヒットするものとそうでないものがあるが、そこにはどのような法則性があるのか。みんながなんとなく思ったり、感じたりしているのではないかということを書くと必ず大きな反響がある。聴き手に演出させるのりしろのある商品に仕上げることが大切である≫。 キイ・ワードは、「演出をゆだねる〝のりしろ〟」「抽象化と具体化の絶妙なバランス」「あいまいな気持を位置づける」「矛盾や葛藤に宿るリアリティ」といったものです。このように過去のヒット曲には聞き手が歌って欲しいことは何かが綿密に計算されており、時代をしっかりとつかんでいるというメガヒット黄金の法則があるようです。
後半は、書籍の販売市場を例にとられ、日本に流通している書籍は12億冊以上で年間7万冊の新刊が発売されているが、この市場の特徴は上位のものは驚くほど売れるが、大部分のものは少しずつしか売れていないということである。分析すると、上位1.5% の銘柄の売上げ冊数が全体の約50%を占めている。逆の見方をすれば残りの98.5%の銘柄で50%ということになっており、今はロングテールが長くなっている。このように正規分布にならないベキ乗分布といわれるサンプルが数多く見られることがわかってきた。書籍や音楽の売上げだけではなく、自然界や社会においてもこういった現象が多く存在することが判ってきている。最後に学問と研究の違いを話され、3時間にわたる講義は終了しました。この講義は大学でも行なわれているとのことですが、生徒達も熱心に聞き入っていました。井庭先生には、暑い中にもかかわらず遠路本校までお越しいただき心より感謝しております。