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暦とずれる季節感

  8月7日の立秋から既に1ヶ月が経過しました。暦の上では8月23日が“暑さが止む”という意味の「処暑」であり、昨日(9月8日)は“陽気ようやく重なりて露にごりて白色となる”(即ち、大気が冷えてきて露ができはじめるころ)といわれる「白露」ですが、朝晩は少ししのぎやすくなったもののまだまだ本格的な秋の訪れという感じではありません。特に近年では地球の温暖化の影響もあり、暦の持つ意味が次第に移りつつあります。
  また、今日9月9日は五節句の最後となる重陽の節句ですが、日本では五節句の中で最もなじみのない節句になってしまいました。もともと節句というのは中国から伝来した陰陽説が元になっています。つまり偶数は「陰」の数、奇数は「陽」の数となっており、9は一桁の奇数としては最も大きい数字即ち「陽の極まった数」として、陽数を代表する数字になっています。このように9月9日は「陽の極まった数の重日」という意味で「重陽」と呼ばれており、今でも中国では長寿と一家繁栄を祈る大切な日になっています。これらの“節句”はもともと“節供”と書き、江戸時代には公式に法制化された式日で次の五つの節供が設けられており、行事と関係する植物の名を冠して呼ばれることが多かったようです。そして、節句は1月の例外(1月1日は別格)を除き、陽数が重なる日に定められています。
    人日(じんじつ) 1月7日  七草の節句  上巳(じょうし)  3月3日  桃の節句・ひな祭り
    端午(たんご)  5月5日  菖蒲の節句  七夕(しちせき) 7月7日  竹・笹の節句・たなばた
    重陽(ちょうよう) 9月9日  菊の節句
  日本では4や9は死や苦に繋がるということで嫌がられていますが、中国では9はむしろ縁起の良い数字になっているのです。そして、 この原因はこれらの節句は旧暦をベースにしており、農作業と深い関係があったようですが、新暦になって季節感がずれてしまったからです。また、上巳から重陽の節句までの期間は、ほぼ農作業の期間に一致し、五節句の日は昔から農村の共同体みんなが休む日となっていたようです。
  現在、日本は農林水産業に従事する人が減少し、米作りを中心とした文化が失われつつありますが、非常に残念なことであり、今一度日本の文化を見直さなければならないと感じています。