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二つの耳鳴り~会田雄次氏の憂い

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  箱根会議において、上甲晃氏が話された『二つの耳鳴り』について紹介します。
  "私は60歳を超えてから、2つの耳鳴りが始まったが、最近とみにこれが大きくなってきている。 一つは、大学時代の恩師である会田雄次氏が語っておられた言葉であり、もう一つは松下政経塾での松下幸之助氏の言葉である。
  会田先生は当時学生であった私達に対し「君達が日本を動かすようになる時のことを本当に心配している」と常に言っておられた。最初は何のことか解らず、あまり気にもかけていなかったが、最近になってこの意味が解るようになってきた。私は小泉元首相や麻生首相と同じ年であるが、会田先生が一番心配しておられた世代が今、日本を動かす立場になってきている。
  我々の世代がこれまでの世代と決定的に違うのは、戦後の教育を受けてきたということである。戦後アメリカが日本という国に対して考えたのは「二度と日本がアメリカに刃向かうことのないようにする」ということであった。端的に言うとそれは日本人を骨抜きにすることであり、日本人としての精神的支柱を取り除くということであった。そのために最重点として行ったのが、戦後の教育に関して「してはならない」という三つのタブーを作るということであった。これらは ①日本人としての誇りを感じる「歴史教育」をしてはならない ②修身といわれる「道徳教育」をしてはならない ③人間を超える偉大な存在である神や仏を尊ぶという「宗教教育」をしてはならない というものであった。
  正しい歴史観を持つ、人の道をはずさない、神や天が見ている、という三つのことは、人間としての基本である。戦前の教育はこの三つをベースとして構成されていた。しかし最近は、残念なことに自分の国のことを悪く言い、人の嫌がることを平気で行ない、やさしさや思いやりや感謝の気持ちを持たず、自分のことしか考えない人間が増えてきている。さまざまな偽装事件が起きるのは当たり前であると思う。"
  昔から「ある国を滅ぼそうと思ったら武器は要らない。教育を駄目にすれば良い」ということが言われていますが、私もこの言葉の重みを痛感しています。本来、日本は世界で一番古い伝統を持つ国であり、日本人は清らかで思いやりや優しさの心を持つ国民であったはずです。日本の良き伝統や高邁な精神を取り戻し、誇りと自信を持っていきたいものです。
   ≪会田雄次≫ 1916~1997年、 歴史学者、京都大学名誉教授、
             主な著書 日本の運命、日本人の生き方、アーロン収容所等