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松原泰道氏の教え~明珠在掌

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  私の愛読書の一つに『致知』があります。この本は人間学を学ぶ月刊誌ですが、一般の書店には販売されていません。私がこの本と出会ったのは10年以上前になりますが、安岡正篤先生をはじめさまざまな人物の考えや生き様が紹介されており、非常に学ぶことが多いように感じています。
  毎月、巻頭の言葉が紹介されますが、最近はウシオ電機会長の牛尾治朗氏、アサヒビール名誉顧問の中條高徳氏、それに仏教の宗派を超えて「つじ説法」を行なう『南無の会』会長の松原泰道氏の3人がリレーで執筆されています。
  今月号は松原泰道氏でしたが『明珠在掌(みょうじゅざいしょう)』という禅の言葉が紹介されていました。これは〝その大切な象徴が手のひら、至近の距離の中にある〟ことを説いている禅語です。今回、同氏は幸せの青い鳥を求めて旅に出たチルチルとミチルが旅の末に幸せは身近なところにあることに気づく『青い鳥』という童話や〝極楽は眉毛の上のつるしもの あまり近さに見つけざりけり〟という道元禅師の言葉を引用されています。そして、「私達は肝心の《いま、ここ》を捨て、どこかよそに幸せを求めていきがちであるが、それは決して幸福を得る道ではない。幸福とは他から与えられるものではなく、自ら発見してつかみとっていくものである。与えられるものを待っているのではなく、マイナスの中にプラスを発見し、耕していくところに人生の生きがいはある。両手の掌に鋤(すき)や鍬(くわ)を持って一所懸命に耕していくことによって掌の中に明珠がつくられていく。幸福は足下にあり。このことを忘れず日々の生活の中から幸福を見出し、豊かな人生を築いていきたいものです。」という言葉で締めくくられています。
  私はこの言葉に大いに感銘を受けましたが、これが松原泰道氏の最後の巻頭言になりました。同氏は7月29日に肺炎のため101歳の生涯を閉じられたのです。数多くの著書がありますが、代表作である『般若心経入門』を一度紐解いてみてください。