プラス思考で前向きに生きる (Ⅰ)
学校改革の一環として「コース制」を導入した最初の学年である52期生が卒業して一ヶ月が経過しました。本校ではこれまでほとんどの生徒が上級学校に進学していますが、これが最終目的ではありません。本校の教育の基本的な考え方は〝将来社会で役立つ人材の育成〟です。これから更に研鑽を積み社会で大いに活躍してくれることを心より願っています。しかし、社会においては与えられたことだけをこなしていくだけでは不十分であり、自分の人生は自分で切り開いていくという姿勢が必要です。
そのために『プラス思考で前向きに生きる』というテーマで、心がけて欲しいことを取り上げてみました。なお、このエッセンスは先日発刊された学園機関誌『ひばり』に掲載されていますが、これから2回に分けてこの内容を掲載します。
〝今、世界はまさに新しい時代の幕明けを迎えようとしています。石油を核とする工業化社会からの脱脚、アメリカ一極集中体制からBRICsを中心とした世界多極化体制への移行、地球温暖化をはじめとする環境問題への対応、人口爆発に伴う食料・水・エネルギー対策等課題は山積しています。これらに加えて日本では少子高齢化が進展し年金や医療問題、増加し続ける国家債務の削減等の抜本的な改革が迫られています。また、最近の雇用情勢を見ても非常に厳しいものがあるため、若い人達の中には日本の将来について不安を抱く人も多いのではないかと思います。特に今の高校生以下は全員が平成生まれで、日本の元気な姿を知りません。従ってどうしても縮み思考になりがちですが、これではいつまで経っても閉塞状況は打破できません。これからはプラス思考で前向きに取り組んでいくことが何よりも大切です。
既に太平洋戦争後60年以上が経過し、戦後の日本のことを知る人も次第に少なくなりつつあるため、ここで戦後のわが国の歩みを整理してみたいと思います。終戦当時の日本の状況は衣・食・住のどれをとっても今とは比べ物にならない厳しいものでした。しかし、国民一人ひとりが何とか国を復興しようという強い思いを持って努力を重ね、世界から奇跡といわれるような目覚しい経済発展を遂げたのです。そしてGDP世界第2位の経済大国としての地歩を築き上げましたが、この間は必ずしも平坦な道のりではありませんでした。オイルショックや円高というさまざまな逆風を受けながら知恵を搾り出し、この難局を乗り切ってきたのです。しかし、この繁栄も束の間、90年代に入り、一転してバブル経済が崩壊し、その後遺症にもがき苦しむことになってしまいました。そして、急速なグローバル化の波に乗り遅れ、やっと回復の兆しが見え始めた矢先にリーマンショックに端を発した世界恐慌により再び経済の停滞が生じてしまったのです。更に中国をはじめとする新興国の台頭により、技術立国としての基盤も揺るぎ始めています。このように考えると、まさに今日本はピンチの真っ只中にいるのかも知れません。
しかし、冷静に見ると厳しい時代であるからこそ、逆に大きなチャンスが待ち受けているのです。というのは過去の歴史を紐解くと、不況の時に時代を変える画期的な技術革新が起きているからです。このことは、人間は危機になればなるほど智恵を絞り出すということを如実に物語っています。トヨタ自動織機が自動車部を設置したのは1933年、コピー機やポラロイドカメラが開発されたのは1937年(世界恐慌後)、コンピュータの開発は1945年(第2次世界大戦後)、ソニーがウォークマンを発売したのは1979年(第2次石油ショック後)、グーグルの設立は1998年(アジアの金融危機後)、アップルがiPod発売したのは2001年(ITバブル崩壊後)です。このように考えると〝不況は新たな技術が生まれ、人が育つ絶好のチャンスである。〟ということになります。〟
≪続く≫