学校経営~鍋蓋組織とピラミッド型組織
今、大阪府においては教育条例案をめぐって、さまざまな議論が交わされています。本日は大阪府の教育委員全員がこの条例案に反対するということで記者会見を行ないました。私はこれまで、34年間、民間企業のパナソニックで人事部門や経営の仕事を担当してきました。そして、4年間大阪府立高校の校長を歴任した後、現在本校で校長の仕事に就いています。この10年間の教育現場での勤務を通じて、正直なところ民間企業でのマネジメントをそのまま適応することは難しいと思っています。何故なら企業と学校では組織風土が全く異なるからです。従って、これから何回かにわたって、学校経営ということについての私なりの考え方を紹介していきたいと思っています。
最初に取り上げるのは組織の違いです。学校は『鍋蓋(なべぶた)組織』になっていると言われていますが、この意味は校長・教頭が鍋のつまみで、この下に各教員が横並びに位置しているということです。実際の学校組織を見ると、縦糸としての「学年」と横糸としての「分掌」があります。そして、小学校、中学校、高校と上級学校に進むにつれて教科の専門性が高まるため、教科としての取組みが重要になってきます。このように中学校や高校では「学年」「分掌」「教科」という3つの調整をはかりながら学校経営をしていかなければなりません。しかも、学年は一つではなく、各学年の状況が異なるため調整が難しいということもあって、ともすると学年中心の運営になってしまいます。そのため、毎年、修学旅行先が変わる、模擬試験のやり方や補習、進路指導、生徒指導等のやり方が異なるということになってしまいます。この結果、前年度の反省や苦労して作り上げたノウハウが次の学年に引き継がれないという事態を招くというケースも散見されます。また、学年主任や分掌部長が校長の任命制になっていない学校もあって、リーダーシップが発揮しにくいということもあるようです。そして、すべての物事が話し合いで決まっていくため、大きな改革ができにくいということになりがちです。これまでのように、学校を大きく変える必要がない時には、このやり方で十分であったと思います。
民間企業では、ピラミッド型の組織になっており、トップの意思が末端にまで届くようになっています。そして、製造や営業という「ライン」と経理や人事・企画という「スタッフ」が明確に分かれており、ライン業務とスタッフ業務を兼務することはほとんどありません。そしてスタッフの役割はラインの仕事がスムーズに流れるように調整したり、仕組みやシステムの構築をはかる等の活動を通じて事業を伸ばすことを目的としてトップを補佐し経営改革を推進していくようになっていました。しかし、最近の環境の変化に対応し、迅速な意思決定をはかるために、階層を減らすことによりフラット化を目指しています。このことからも解るように、裁量性の大きい鍋蓋組織が一方的に悪いというのではありません。
本校では、「教務」「進路」「生徒指導」「入試広報」の4分掌と中・高の6学年の責任者をはじめ、教職員の人事についてはすべて校長が任命することになっています。そして、学校を取り巻く環境が大きく変わる中にあって、学年単独の取組みではなく、分掌とのマトリックスによって円滑に教育活動が推進されるように学校全体のシステム化をはかっていきたいと思っています。