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世界多極化の中の日本

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   これまで何回かにわたって、世界が多極化してきているということに触れましたが、これはアメリカ・ヨーロッパ・日本を中心とした三極体制やアメリカの一極集中体制が徐々に移行するというようなものではなく、急激に世界の枠組みが変わリ、全く新しい経済社会が生まれてくることを意味しています。このような環境の変化の下では、これまでの成功体験は全く参考にならないばかりか、かえって経営判断を誤らせることになるかもしれません。この新しい枠組みの中で、考えておかなければならないのは、今までとは全く異なる市場が生まれるということです。
  これから発展してくるのは途上国ですが、これらの国における一人あたりの所得水準は先進国に比べると高くはありません。そのため、これまで先進諸国で受け入れられてきた製品やサービスがそのまま受け入れられることはありません。しかし、膨大な人口を有しているため、マーケットの規模としては極めて大きいのです。
  最近、新聞紙上でもB.O.Pという言葉が目につくようになってきましたが、これは世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指すもので、Base Of the Pyramid の略です。かつてはBottomという単語が使われていましたが、差別的な意味もあるということで、Baseということになりました。そして、現在地球上の約40億人がこの層に該当しており、市場規模は実に約5兆ドル(約400兆円)にも上ると言われています。また、このうちの30億人がアジアに居住しています。言い換えるとアジアの人口の80%がBOP層であり、これからますますアジア市場が注目されてきます。
  そして、企業にとっては利益を追求しつつ、低所得者層の生活水準の向上に貢献できるというビジネスモデル」が求められるため、現地でのさまざまな社会課題の解決をはかるという基本的な姿勢が不可欠です。日本企業はグローバル化への対応が不十分であると言われていますが、この要因の一つが途上国に対するビジネスの遅れなのです。近年になって、ようやく多くの日本企業がグローバル化に向けて、経営の舵を切り始めています。これから、これらの企業活動の事例を取り上げていきたいと思っています。