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日本企業を取り巻く諸課題

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  今、輸出関連企業を中心に企業業績が悪化してきており、懸命な努力を続けているにも関わらず本格回復には程遠い状況です。これまで日本の経済界は経営環境の悪さを「5重苦」と呼んで、政府にその改善を求めていました。この5つは「円高」「世界一高い法人税率」「自由貿易協定(FTA)、TPPの立ち遅れ」 「製造業の派遣労働禁止」「温室効果ガス排出量の25%削減」です。これに東日本大震災後における「電力不足」が加わり、現在は「6重苦」という状況になっています。
  とりわけ、ゆきすぎた円高の結果、企業の売上げと利益は大幅な下方修正を余儀なくされています。現在、自動車や電機メーカーは韓国企業と激しい競争を展開していますが、現代自動車やサムソンはウォン安を背景に着々と占有率を伸ばしてきています。例えば、トヨタでは1円の円高による利益への影響は340億円減、本田や日産では200億円減という金額になります。また、法人税も日本が約40%であるのに対して、韓国が24.2%と大きな差になっています。更に、自由貿易協定の遅れによって、日本企業は関税面でも大きなハンディキャップを負っています。
  しっかりと認識しておかなくてはならないのは、これまで日本企業が差別化のカギにしてきた品質と機能は、ほぼ市場の要求水準に達してしまったということです。この結果、同じ品質・機能でより低価格なものに目が向き始めてきています。言い換えるとコスト力がより重要になってきており、あらゆる部分で高コスト体質にある日本企業が国際競争力を保つのは難しくなってきているのです。そして、これまでの5重苦と今回の電力不足とは抜本的な違いがあります。つまり、「5重苦」の場合は企業の利益を圧迫するものであるのに対して「電力不足」は直接生産活動に結びつくものです。特に電力消費型の産業にとっては死活問題になります。このような状況下にあって、最近、日本企業は高コスト構造を抜け出し、電力不足に対応するために海外シフトの動きを加速し始めました。
  既にエルピーダ・メモリーが台湾に半導体工場、パナソニックがマレーシアに太陽電池工場、東レが韓国に炭素繊維工場、日産がメキシコに完成車工場等の建設を発表しています。
  また、EUにおける財政危機、新興国における景気の減速リスク等からも目が離せません。企業努力も限界に達しつつある中で、政権争いに明け暮れている時間的な余裕はないと思っています。