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先送りできない日本

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  日本は今、歴史の分水嶺という大きな変化に直面しています。このような状況に陥った理由を一口で表現すると日本としての国家戦略の欠如です。 66年前、日本は第2次世界大戦の敗戦により、全土が焼野が原になり、まさにゼロからのスタートでした。その後、全国民が力を合わせて日本の復興をはかり、不死鳥のように蘇り、世界中から〝奇跡だ〟〝信じられない〟と言われるような経済発展を遂げました。しかし、東西の冷戦が終結し、経済のグローバル化が急速に進展する中で、これまでの成功体験が忘れられず、思い切った手を打つことができなかったため、世界の中での地位が下がり続けています。そして、デフレと円高によって企業の利益が減少し、税収が増えないという状況が続いています。
  一方で日本の人口は2005年をピークにして減少に転じており、高齢化率は世界一となり5人に1人は65歳以上ということになっています。そして、この傾向は益々進み2050年には3人に1人になります。同時に生産年齢人口(15歳~64歳)が減少することになり、これらの人の負担が増加することになってきます。人口構成や出生率を見れば、このような社会が到来することは20年以上も前から予想されていたことです。つまり、団塊の世代が一気に引退する時には社会保障にかかる予算は膨大なものになり、現行の制度が続く限り、社会保障費は毎年1兆円増加していくという事実です。この他にもさまざまなバラマキ政策によって国の借金は1000兆円になろうとしています。そして税収を上回る国債の発行を余儀なくされているのです。
  今、ギリシャやイタリアやポルトガルの国家財政が深刻な状況に陥っていますが、GDPに対する借金の比率という点では日本がずば抜けて高いのです。にもかかわらず、日本がこれらの国よりも大きな問題にならないのは、膨大な個人資産によって日本国債が消化されているからです。しかし、徐々に貯蓄率が低下し、個人資産が減少しつつあることを見ると、早晩日本の借金が個人資産を上回ることになってしまいます。現在、国債の金利支払いだけでも10兆円近いお金が必要になってきています。
  家計に例えると、収入が少ないのに借金をして贅沢な暮らしをしているということです。徹底して支出を減らし収入を増やしていかなければ、日本がやがて破綻するのは目に見えています。〝自分さえ良ければ他の人はどうなってもかまわない〟〝自分が生きているうちは何とかなるだろう〟といった考え方は避けなければなりません。まさに、日本は先送りできない待ったなしの状況になっているのです。選挙での票の獲得を目的としたバラマキをなくし、徹底して無駄を削減する。そして、一人ひとりが危機感を持ち、真面目に働いて税収を増やし、後世に負の遺産を引き継がないという強い決意が必要であると思っています。
  なお、ジャーナリストの池上彰氏の著書『先送りできない日本』には日本の現状が分かりやすく解説されていますので、是非ご一読ください。