国の借金と財政再建
財務省によると、現在国債や借入金などを合わせた国の債務残高、借金の総額は既に900兆円を超え、今年度末の時点では1年前に比べて99兆円増えて、1024兆1047億円となる見通しです。これはGDP比で見ると、財政危機に陥ったギリシャをはるかに上回る突出した金額ですが、日本が大きな財政危機に陥っていないのは、その約9割を国内の銀行等が個人の預貯金を経由して買っているからです。また、震災復興のための復興債の発行等、国の借金は今後もさらに膨らむのは確実な情勢です。このままでは、日本の借金の増加は雪だるま式に増加し歯止めが利かない状況に陥ってしまいます。それでは日本はこの先、いくらまで借金できるのかということが問題になりますが、上限の目安は日本人の家計の金融資産の総額約1400兆円ではないかと言われています。
しかし、そう安心してばかりもできない理由が出てきています。実は国内の家計の総資産から住宅ローンなどの負債を差し引くと、“純資産”は約1100兆円しかないということです。そして、引き続く景気低迷のために貯蓄率は鈍化してきており、株や社債などのリスク資産も目減りしてきています。また、これらの金融資産の大半を保有しているのが高齢者であるため、今後は貯蓄を取り崩す動きが強まってきます。そうすると、いずれ近い将来には国の借金が家計の純資産を上回ってしまう可能性が出てきます。この結果、国債の国内消費のウェイトは減り、外国から借金する比率が増え、ギリシャと同様の状況になり、最悪の場合デフォルト(債務不履行)ということになってしまいます。
現在、税と社会保障の一体改革が議論されていますが、社会保障の給付は維持して欲しい、税金は払いたくない、という〝つけの先送りの姿勢〟ではいつまで経っても課題は解決しません。また、公務員の人件費や国会議員の定数、公益法人の削減、公共事業の見直し等の支出も徹底的に抑制しなければなりません。要は痛みを伴う思い切った改革を断行しなければならないということです。更に、環境等の新たな産業の創出を行ない、雇用を確保し、税収を増やす政策も必要となってきます。どれを取り上げても簡単に解決できるものではありませんが、〝後世に負の遺産を引き継がない〟という強い姿勢が必要であると思っています。