匠の技「木殺し」
ほぞ ほぞ穴
木材の接合方法のなかに「ほぞ組」というものがあります。単に木材の接合部分に接着剤をつけて釘を打つより格段に丈夫な接合方法です。「ほぞ組」は「ほぞ」と呼ばれる凸部を「ほぞ穴」と呼ばれる凹部に差し込む接合方法です。釘や接着剤は必要ありません。「ほぞ」が「ほぞ穴」より小さいと抜けやすくダメですし、大きすぎると入らないことは分かると思います。正確な加工技術が要求されますが、同じ寸法につくれば良いというものではありません。ほんの少し「ほぞ穴」より大きい「ほぞ」をつくり、「木殺し」をすることが「匠の技」とされています。「ほぞ」を玄翁でたたいて凹ませることを「木殺し」といいます。玄翁の頭は、平らな面と丸みのある面がありますが、丸みのある面で木材の繊維を断ち切らない程度の力加減で叩くことが肝心です。そうすれば、「ほぞ穴」の中に差し込まれた後、元に戻りピッタリあって抜けなくなります。まさに「匠の技・匠の知恵」です。
目標とするものより少し大きなものをつくり、「木殺し」という技を使って組み立てます。小さくても、大きすぎてもダメです。大きなものを無理やりたたいて繊維をつぶしてしまっては「木殺し」にはなりません。私たちが目標を立てる時と、どこか似ているような気がします。努力の必要もなく簡単にできそうな小さなもの、反対に実現しそうもない大きすぎるものは目標になりません。努力して頑張れば実現しそうなものが適切な目標になります。また、意欲も湧きます。その繰り返しが大きな目標・夢の実現へと繋がっていくのだと思います。「夢は叶う」と言われます。叶うまで追い続けるからです。大きな目標に「木殺し」という技を使って。
ほぞ組で制作された学習スペースの椅子