多くの評価軸で観る
広島の民話に「ざるどじょう」というものがあります。大小さまざまなドジョウを大中小に分けようとすると、ヌルヌルしていてなかなか上手く摑めません。わざわざ手で選り分けなくても、ざるの中に放置しておくと、揉み合っているうちに、小さいものが下に、中くらいのものが真ん中に、大きいものが上の方に重なるという話です。自由に競わせておけば自然と強いものが上に、弱いものが下になるということです。弱肉強食、強いものが勝ち弱いものが負ける、動物の世界での競争原理です。
では、人間の世界ではどうでしょうか。一つの価値判断、基準だけで競うとその能力に長けたものが勝ちます。例えば100mをどれだけ短時間で走れるかということであれば、瞬発力のあるものが勝ちます。でも、マラソンになると100mで勝つものがマラソンでも勝てるかというと、そうとは限りません。もっといえば、走力ではなく他の能力での競い合いになると、また違った結果になります。ここでいいたいことは、一つの尺度だけで判断すると、他にいくら優れた能力を持っていたとしても、判断の材料にはされなく、ダメだという烙印を押されることになります。このようなことになると、せっかくの能力、素質も「宝の持ち腐れ」になってしまいます。また、これは自信がある、得意だと思うことに取り組む中から、苦手だと思っていたことも出来るようになるということもよくあることです。ここが動物の世界と違うところです。「ざるどじょう」になってはいけません。多面的な尺度、多くの評価軸で生徒を観ることが持てる能力を引き出すことになる、と私は考えています。