ニュージーランド研修64
NZ研修参加者から感想が届きましたので、紹介します。
「私のホストファミリー」
長かったようで、短かったニュージーランド研修。今、言えることはほんとうに行ってよかったということです。終わったあとで、私の中に残ったたくさんの大切なものに気づけました。大切なものと言ってもいろいろありますが、実践的な英語力はもちろんのこと、人間としての力もニュージーランド研修で身につけられたと思います。ほんとうの意味で、人生は自分で豊かにできるものだと気づかせてくれる体験をたくさんさせて頂きました。ニュージーランドに行けば、すべては自分次第。楽しむことも、怖がることも、あきらめようとすることもぜんぶ自分で決めることができます。それにどれだけ早く気づくかが、この研修を充実させる鍵だったと思います。
私は最初の1週間、そのことに気づくまでは、ホームステイファミリーと話すのがとても怖く、どうやって馴染めばいいのか考えれば考えるほどわからなくなって、ファミリーと出来るだけ顔を見合わせないようにしていたことがありました。それでもマザーは、話しかけられていちいち緊張している私の背中をポンポンと叩きながら、辛抱強く、私の言葉を待っていてくれました。
ある日、私はいつものように話すこともできず、自分の部屋に戻ることもできず、面白くもないテレビの前で固まりながら座っていました。すると、ファザーが帽子をかぶって、ちょっと来て!と私に声をかけました。ファザーは私をガレージに連れていくと、袋のなかから持ってきたくるみをとりだして、くるみ割りでくるみをわり、とつぜん私の口にほおりこみました。私はあまりに突然のことで、ファザーと2人きりということもあり、緊張していて、味もわからないまま、goodといいました。すると、ファザーはもう一つ、もう一つと、くるみを私の口にどんどんほおりこみました。くるみでのどがつまりそうにな
り、もういらない。と言うと、ファザーは困った顔をして黙り込んでしまいました。すると、ファザーが思いついたように、突然後ろを向いて、ごそごそしはじめました。私はなにか気分を悪くさせたのではないかと不安になり、声をかけようとした次の瞬間、ファザーが振り向きました。驚くことにその振り向いた両目には、ビールのビンが2つはまっていたのです。私はあまりにびっくりして、しばらく口がきけませんでした。3秒ほどして私は、ファザーはずっと私を楽しませようとして、わざとおかしなことをしたり、おいしいと言ったくるみを与えてくれていたんだと気づき、怖いと思っていたファザーがこんなことをしてくれている、と思うと今まで不安に思っていたことが妙におかしくなり、笑いが止まらなくなりました。ニュージーランドのこの家に来て、初めて心から笑った瞬間でした。私は不安になることなんてない、こんなに歓迎されているのだから、とそれまでのプレッシャーも、なにも上手くできない罪悪感も消えて、素直に嬉しく思えました。ファザーも笑いだし、私を抱き上げ、you are laughter girl!と叫びました。
このとき以来、ファザーはなにか私が落ち込んだ顔をしているたびにいつも同じことをしてくれました。ほんとうにくるみが好きなわけでも、ファザーの芸が面白かったわけでもなかったけれど、そのときの私には部屋に帰ってから、嬉しくて泣きそうになったほど、くるみの味やファザーの笑い声がじんじんと心に染みました。今まで涙が出そうになるほど、幸せを感じることなんてそんなになかったと思います。それは、こんな遠い異国の地で、1人きりで頑張ろうとしていたからこそ感じられたことだと思います。それからは少しずつ笑顔をみせられるようになり、ファザーに冗談を返せるようになるまでに打ち解けました。最後にほんとうに帰りたくないと思えたのは、マザーとファザーのおかげです。私はタウランガの町が大好きになりました。一緒に行ってくれた友達や、温かく迎えてくれたファミリー、相談に乗ってくれた恵子さん、たくさんの大切な人ができました。この研修は誰にとっても一生忘れられないものになったと思います。それだけでなく、たくさんの自然を見て、人の温かさに触れることで、人生っていいものだなぁと改めて思えました。ニュージーランドに行かせてくれた、お母さん、おばあちゃん、先生、すべての人に感謝したいです。ほんとうに貴重な経験をありがとうございました。