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教授の皮肉

 高校3年の文法問題の演習で、ニヤリとしてしまった。与えられた英文の誤りを探し訂正する問題である。まず問題文を示そう。

 When I graduated the high school, I was so exhausted that I decided to
go to university to rest for four years. (上智大学)

 答えは簡単。 graduated のあとに from を入れればいいのだが、訳してみると

「高校を卒業したとき私はとても消耗していたので4年間休むために大学へ行く決心をした」

 となる。

 上智と言えば難関校である。生徒は受験勉強でおそらくへとへとになって入学してくるのであろう。日本人の学生は高校ではよく勉強するが大学に入ると遊びほうけるというパターンがここでも当てはまるようで、上智大学の先生は入試問題に一発皮肉をかましたというところか。
 「学生にやる気がありませんなあ」「ほんとに何のために大学へ来てるんだか」「いや、うちはまだましなほうですよ。○○大学なんぞ、あなた、授業中にメールしてるわ、しゃべり続けるのがいるわ、大変ですよ」「このままじゃ国が亡びますなあ。嘆かわしい」などと、教授たちが額にしわを寄せて話し合う姿が目に浮かぶのである。

 さて、ここからは特に高校生諸君に読んで欲しい。大学は本来学問をしに行くところである。あなた方が今やっている「お勉強」とは違うのである。もちろん高校時代の勉強でつちかった基礎力を用いて行うのであるが、学問には決められた教科書やテストはない。だから大学1、2年で受ける講義はまだお勉強だといえる。
 3年生ぐらいになるとやっとゼミに所属し、研究テーマが決まり、本来の学問らしい学問が始まる。自ら研究の方向を決め、関連した書物をさがし、いろいろな情報を統合したり、いくつかの論文から仮説として導き出されることを実験で証明したりする。それが卒業論文という形で結実するわけである。
 つまり学問には創造性がいる。いろんな論文を統合して自説を創る場合は、その統合の仕方に独創性がいるし、データを統計処理して有意差を出すような場合はそのデータを取るためのデザインに工夫がいる。
 そう考えてくると、学問はお勉強とはかなり違いますよね。そして、論文というのはそのようにして書かれるものなのです。でもそのためには、精神的に元気でないとね。勉強で疲れ切った状態ではその元気はやっぱり出ないんですよね。                                        
                                              (田畑保行)