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『醜い日本の私』

 もう10年以上前になるのでしょうか,ヨーロッパ研修から帰ってきた当日,176号線バイパスを走っていて,なぜに日本の空に広がりがないのか不思議に思ったことがあります。それが電柱・電線のせいだと気づくまで,そう時間はかかりませんでした。
 当時に比べ,電線はより肥大化し,無遠慮に空を占拠してしまっています。今は,片側だけ地下に埋設されてきれいな街並みになりましたが,阪急川西交差点から呉服橋までの国道176号線の空は,そりゃもう,無茶苦茶でした。1995年1月15日,学校の様子を見に車で通ったときは,大きな余震がきて電柱が倒れてきたらと覚悟しながら走ったものでした。
 私の家の前にも大きなコンクリート製の電柱が1本立っています。その電柱のためにせっかくの景色が台無しになっていました。それで,関西電力に電話して,なぜ,ここに電柱を立てなければならないのか,なぜ埋設しないのか,尋ねたことがあります。丁寧な回答が返ってきましたが,要は「電線に無理な張力がかからないように。埋設するには地主の許可が要り,それは自己負担である」ということでした。
そう言われたらどうしようもありません。でも諦めきれないので,せめて1m移設して欲しいと依頼しました。そしたら,2~3日後,すぐに工事が始まり,簡単に一日で立て直しが完了しました。加えて,使用料(電柱を立てるために敷地を使用している対価)1000円(だったと思います)が支払われました。
後で調べたら,市町村道の電柱(電話柱を含む)に電線を架ける際に自治体に支払う使用料(道路占有料)は年間1本につき1600円なんだそうです。電柱の数をかけると,結構なお金が支払われていることがわかります。それなら埋設すればいいのにね。

日本の空が汚くなったのは,急速に進むIT化により,NTTの電話線以外に,光ケーブルやケーブルテレビのケーブル,有線のケーブル等他社の線も一緒に張られているためです。お客様のためなら例え線がぐちゃぐちゃになっても仕方ない,景色よりも,自然よりも経済が優先した結果の表れといえます。これは,新潮選書『醜い日本の私』(中島義道 新潮社 1000円)でも著者が何度も触れていることですが,日本独特の精神構造が絡んでいるためなのだそうです。(続きは明日)