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続・AO入試

 しかし、この方式の効果が顕著だったのは最初の5年ばかりだったようです。何事にせよ土着して浸透するに従って、斬新さが失われて「和式」になっていくもので、これは何も高校側がSFCのAO入試に対して「傾向と対策」を練って対応したからばかりではないでしょう。5年も経つと思い通りの学生が集まらなくなり、2000年には普通の推薦入試と形式こそ変われ、大差がなくなってしまいます。
ともあれ、AO入試はその後1994年に立命館大学が取り入れ、徐々に私立大学の間に拡がっていきましたが、2000年あたりから激増し、最近ではすっかり定着し、私学はおろか国公立の大学も採用するようになっています。

 AO入試の現状ですが、日本の大学には合衆国のAdmissions Office に相当する入試担当事務局が存在しないので、事務員と教員が協力して(実態は教員が中心になって)行っているようです。出題、選抜方法、実施時期は大学によって色々です。大体は大学が「求める学生像」を提示し、それに対して受験生はエントリーシートでそれに応募します。入試事務局とやりとりを行った後正式に出願するということになります。大学側は書類審査で絞ったあと、面接や小論文、実技、適性検査など様々な方法で選抜するのが一般的のようです。時期的にも早く実施されること、また学力試験がないので、従来の入試では断念せざるを得なかった大学に入学できたり、適性に合致した大学を選ぶことが可能になるなど有利な点もあるのですが、逆に、学力試験が無いので合格できてしまったため、あとで大学の授業のレベルについていけないなどという悲惨なことにもなりかねませんので注意も必要です。(すでに合格している諸君は十分覚悟して臨む必要があります。)

 文部科学省の発表では、今年度の入試で初めて、私立大学の一般入試による入学者が5割を切り、49.6%となりました。それに対して増加したのが推薦入試とAO入試による入学者で、これが49.8%を占めることになり、一般入試の比率を上回ることになりました。私立大学の入学者実数は47万6823人で、このうち一般入試での入学者は23万6669人、推薦入試は19万8143人(41.6%)、AO入試が3万9225人(8.2%)となって、この推薦入試分とAO入試分の合計(23万7368人)が、一般入試を上回ったのです。(昨年度は一般入試の方がこの合計数を7670人上回っていました。)特に、AO入試の増加率はめざましく6254人の増加になっています。推薦入試の増加は3993人にすぎませんから、この一般入試が凌駕された一番の原因はAO入試の激増に他なりません。
 又、国公立大学でも、従来は30%を目安とされていた推薦入試の募集定員の比率が、2008年度入試から推薦入試とAO入試をあわせて50%まで可能になりました。
現に、各国公立大学が7月までに公表した選抜要項の概要によると、推薦・AO入試の大学・学部の実施率は過去最高を示しています。推薦入試は国公立大学142大学(91.6%)、402学部(74.0%)、AO入試は59大学(38.1%)、154学部(28.4%)となっています。
国公立大学も法人化されて、少子化の影響もあり、私立並みに学生の獲得に本腰をいれて考えるようになった結果といえるでしょう。

  文責 山本正彦