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知力・気力・体力

 今年は北京オリンピックの年です。運動選手の檜舞台ともいえるもので、スポーツ選手にとっての一番の晴れ舞台です。このオリンピックに出場すること自体が容易なことではないのは言うまでもありません。いわば国の代表な訳ですから非常に名誉なことでもあります。この「国の代表」というプレッシャーに負けて、自分にとっては日頃の平凡な記録さえ出せずに敗退してしまう選手が少なくありません。出発する前に笑顔で「楽しんできます」と挨拶している選手をよく見かけますが、この挨拶自体が、プレッシャーを意識しているように感じられ、痛々しい感じがしますが、結果を見ると「案の定」ということがよくあります。
 実力ナンバーワンの選手がオリンピックで金メダルを獲るとは限らないので、晴れの舞台で実力を発揮するのが如何に難しいかが分かります。「鳥人」と呼ばれた棒高跳びのブブカ選手は世界新記録を35回も書き換えたくらいの「超人」的選手ですが4回出場したオリンピックで金メダルを獲ったのは1回だけでした。
 これと全く逆のケースもあります。「火事場の馬鹿力」という言葉がありますが、これによく似た現象がおきることがある。勿論、オリンピックは「火事場」などという災害の局面ではなく、晴れの舞台なのですが、こういう場所で実力以上の力を発揮する人もいます。実例を挙げると、バルセロナオリンピック(1992年)で、当時中学2年生だった岩崎恭子さんが、女子平泳ぎ200メートルで金メダルを獲って世界を驚かせました。その決勝の競技会場にはその時の選手団長の古橋廣之進氏(かつて「フジヤマのトビウオ」の異名をとった世界新記録連発の名選手)はいなっかった。それまでの岩崎さんは達人の彼も全く予期していない程度の選手だったのです。この快挙に彼女自身が信じられないといった面持ちで、インタビューに答えた「今まで生きてきた中で一番幸せです」という台詞は当時流行語になったものです。
 前置きが長くなりました。お察しの通り、受験にも全く同じことが言えます。受験生諸君が意識するのは、ともすれば、知力に偏りがちです。17・18日に「受験心得」として比較的細かく注意事項を書きましたが、簡単に言えば、次のようになります。つまり、人間の能力をよく知・情・意と言いますが、受験に必要なのは、知力・気力・体力なので、知力を発揮できるには気力(精神力)が必要で、その気力を支えているのは体力です。これらの三拍子のどれが欠けてもうまくいきません。これらの三拍子を揃えて、受験時にピークにもっていくのに工夫がいるのです。これらの三拍子が揃って初めて平生の力が発揮できるのです。場合によっては、かつての岩崎選手のように僥倖が訪れるかも知れません。事実、受験には「運力」とも言うべきものが訪れることがあります。例えば、不得意の日本史の試験の前の晩に、睡眠薬代わりにたまたま読んだ日本史の1ページの内容が、明くる日の試験にほとんどそっくりそのまま出題されていたりするようなことが起こったりします。幸運としか言いようがありませんが、こういうことはスポーツの世界より起こりやすいことです。
 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、するべき対策をした後は天命を待つしかないでしょう。

 幸運を祈ります。

文責: 山本正彦