一冊の受験参考書 復刻本
今年6月、現代文の受験参考書が筑摩書房から「ちくま学芸文庫」として出版されました。
文庫の帯には「伝説の参考書、待望の復刻」とあります。著者は成城大学名誉教授、高田瑞穂 「新釈現代文」(新塔社 1959,9)文庫定価1100円。解説は早大教授石原千秋氏。この本は、1950年代から1970年代までの約20年以上、現代文の受験参考書として受験生には定番の参考書でした。
阪急梅田の紀伊国屋書店では、平積み(人気の本として売りたい本を積み上げる並べ方)されましたが、文庫にしては値段の高いこの本が瞬く間に売り切れてしまいました。
一ヶ月後の、7月には増刷され、先の紀伊国屋では今度は「面出し」(本の表紙が見えるようにして売りたい本、人気の本を並べる並べ方)して売られていました。
改めて本を手にしてみますと、論理の展開を追って論旨を把握することや、その論旨から離れずに設問を解く方法について、受験問題を使いながら丁寧に解説されています。なにより著者の現代文(文学)に対する熱い思いが解説の一つ一つににじみ出してきて、今も新鮮さを失っていません。
今も昔も、受験生にはひとりひとりお気に入りの参考書があるものです。使い込めば著者の顔までが浮かんでくるものです。そして、受験勉強が終わっても手放せず、何十年後にも手にすると新しい発見をさせてくれる受験参考書があるということ、またそんな本との出会いや再会の楽しさがあるということをこの一冊の受験参考書は教えてくれているようです。