今年度初めての試み、Academic Summer in 同志社が、7月29日・30日の2日間で開催されました。
現在、同志社大学歴史資料館が同志社女子大学で発掘している現場を中心に、過去の同志社大学での発掘成果や、御所北部地域の歴史的変遷のレクチャー、遺物整理の体験など、幅広い取り組みをさせて頂くことができました。
まず、第一日目の7月29日。
午前中は幕末と元禄時代の京都の古地図を囲み、京の街の変遷を講義して頂きました。
本物の古地図を目の前にして、生徒たちは少し興奮ぎみで、最初は触ってしまわないようにと緊張していましたが、すぐに興味津々に覗き込んでいました。
今とは違う京の街の構造に最初は慣れなかったものの、生徒たちの呑み込みは早く、現在の同志社大学・同志社女子大学のポイントを古地図に落とすだけではなく、自主的に現在の京都御苑に当たる場所をチェックする生徒たちもいて、先生も感心されていました。
午後は同志社大学周辺の史跡を実際に巡ってみました。
まずは同志社大学内の遺跡。
ここでは薩摩藩邸や相国寺、相国寺門前町の史跡を辿ることができ、実際にここ数年で発掘された成果をレクチャーして頂きました。
次に相国寺。
実際に相国寺を自分の足で歩いてみることで、普段馴染みのない禅宗寺院の構造を理解できたのではないでしょうか。
一見ただの土の盛り上がりに見える場所が、実は基壇の跡だと教えて頂いた時には、生徒たちは目を丸くしていました。
自分たちが何気なく目にしているものにも、歴史は隠れていることを感じられたのでは、と思います。
最後に、同志社大学に囲まれるようにして、現在に唯一残っている公家屋敷、冷泉家の邸宅。
築地と門を拝見させて頂いただけでしたが、かつてのこの地の面影を忍ぶことができる貴重な場所でした。
普段は目にすることのない風情の邸宅に、生徒たちは非常に興味をひかれたようでした。
再び同志社大学に戻り、今日一日のまとめと次の日の予習として、同志社大学敷地にかつて存在していた薩摩藩邸と相国寺、そして現在調査を進めている同志社女子大学に在った二条家の邸宅について、最新の研究成果を元に講義して頂き、1日目を終了しました。
なかなか考古学の研究資料に触れることがない生徒たちには、貴重な経験となったことと思います。
7月30日、2日目はいよいよ発掘現場に入らせて頂きました。
昨日教えて頂いたことを元に、集合時間前に御所を探索してきたという生徒もいて、生徒たちの前向きな姿勢を頼もしく感じました。
実際に地層や遺構がむき出しとなり、まさに作業真っ只中の現場に入れて頂き、本物の遺構を目の前にして、遺構検出の方法や時代の見分け方などをレクチャーして頂きます。
二条家の庭園跡と思われる遺構だけではなく、幸運なことに、このあたりでは非常に珍しい奈良時代の遺構が発見された直後であり、生徒たちは奈良時代の人々が掘った巨大な水路を目の当たりにすることができました。
午後は、発掘事務所の中で同志社大学の学生にまじって遺物洗浄を行いました。
ただ洗うだけに見えますが、遺物の調査には必要不可欠な、重要な行程です。
実際に遺物に触れ、また泥の中から遺物の姿が徐々に顕になる過程に、生徒たちはすぐに面白さを発見したらしく、洗浄に没頭していました。
自分が手にとったものは一体何なのか、人形なら何の姿をしているのか、と自ら声を挙げる生徒が多かったことには感心しました。
江戸時代の遺物だけではなく、幸運なことに奈良時代の遺物も実際に手に取る機会を頂けたのは、本当に幸運でした。
最後に、遺物に整理番号を注記する作業もさせて頂きました。
竹ぐしで細かくナンバーを打つ作業はコツが必要で、また遺物の上下や接合した時の状態などを考えて書く場所を決めなければならないので、案外難しいものです。
研究員さんに見本を見せて頂いた時には生徒たちは歓声をあげていました。
そして、自分たちの手で行う段になるとまた、遺物洗浄の時と同様、没頭して行っていました。
どちらも、味をしめた生徒は楽しくて仕方がない様子でどんどん作業を進め、研究員さんも少しびっくりしてらっしゃいました。
2日間、日頃は体験できないような学びの連続で、生徒たちには有意義な時間となったことと思います。
この経験をぜひ、今度は中学、高校での学習に生かして下さい。