レ・ミゼラブル 続
せっかくなので、もう1冊
レ・ミゼラブル百六景/鹿島茂(文藝春秋)
自ら「レ・ミゼラブルのことは、日本で一番知っている
人間の一人」と話すフランス文学研究者・鹿島さんに
よる「レ・ミゼラブル」の解説書的な1冊
19世紀当時の木版画230枚の挿絵を盛り込んで
物語細部の解説はもちろん、当時のパリの様子や社会
事情も書かれていて、歴史書ともいえます
表紙になっている少女コゼットの絵は、ミュージカルの
象徴的なポスターにもつかわれています
鹿島さんは、ユゴーがこの作品を通して訴えたかったのは
「愛は確かに勝つ。でも愛というものは貰った分だけしか人に与えられない。愛を受け取ることのない『レ・ミゼラブル=みじめな人々』を救うには、誰かが見返りを求めない無償の愛を最初に与えなければならない。かつては、その誰かがイエスであった。イエス信仰の衰えた現代にあっては、その誰かがあなたなのだ」 ということではないかと書いています
パンを一つ盗んだだけの罪で19年間囚人としての仕打ちを受け、憎しみだけで生きるようになったジャン・ヴァルジャン。彼は仮出獄中に、あることをきっかけに教会の神父から銀の燭台を与えられます
「初めての愛」を受け取ったジャン・ヴァルジャンは心をあらため生きていく事を誓います。ただここで彼はキリスト教の伝道師としてではなく、施設の整った工場の経営者として更生していきます。そして、受け取った愛を貧困にあえぐ人々へむけて差し出します
現代における「愛」は、雇用を作り出すことや働く喜びを伴った社会事業という形で実現されたのだと、鹿島さんはいいます
そして、窮地にたたされたファンテーヌ、コゼット母娘にも救いの手を差し伸べます。こうして愛のリレーが始まっていくのですが、まだここでハッピーエンドとはならないんですね・・・
ジャン・ヴァルジャンの囚人時代を知り、「一度罪を犯した者は永遠に呪われる。法こそがすべて」という、やはり愛を受け取ったことのないジャヴェール警部が執拗に彼を追いかけてくるのです
貧困と格差にあえぐ民衆が自由を求めて立ち上がろうとしていた19世紀のフランスを舞台に、物語は大団円をむかえます
原作、映画とも大作ですが挑戦してみませんか?