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発見された新聞小説

 1968年に日本人で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成

亡くなってから40年ほどたった今年、研究者たちにもあまり知られていない、新聞小説が見つかりました。昭和2年の春に4回ほど新聞に連載されていたもので「美しい!」という作品です。ちなみに、昨夏には大阪にある茨木市立川端康成文学館で未発表小説も発見されています

 伊豆の踊子 で文学界に登場した川端康成は、『新感覚派』としてヨーロッパの前衛的な芸術運動に影響を受け、当初新しい表現方法を用いた文学の革命をめざしていました。手のひらに載るようなごく短い小説を集めた掌の小説水晶幻想などがそうです
 しかし、徐々に日本の伝統的な美しさを追求していくようになります。その頃の作品でよく知られているのが「国境の長いトンネルをぬけると・・」で始まる雪国です
 でも、せっかく関西に住んでいるのですから京都を舞台にした古都を読んでみてはどうでしょう? 
 お互いの存在をしらないまま離れ離れに育った美しい双子の運命を描いた作品です。北山杉の村で身寄りのない村娘として育った苗子と、方や伝統ある織物問屋のお嬢様として大切に育てられ千重子。祇園祭でにぎわうの京都の町で偶然、千重子は自分にそっくりな苗子をみかけます。
 姉妹とわかってからも、二人の生い立ちや現在の立場を思えば、この先一緒に過ごすことはできません。でもお互いを思いやる気持ちは強く、まっすぐで美しい。全く違った環境で育っても、二人の心の奥に流れる気質は同じなのです。京都の四季や行事、京ことばなど日本ならではの美しさを盛り込んだ作品です

 そんな川端康成がそのものずばり「美しい!」というタイトルで書いた今回発見された作品、一体どんな言葉でどんな事を書いているのでしょう・・・

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     川端作品は色々な出版社から、いろいろな形態で出版されています

 また、ノーベル賞授賞式に日本語で行ったスピーチは、美しい日本の私/川端康成 エドワード・G・サイデンステッカー (講談社) としてまとめられています