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12月の図書だよりから ④

 社会科学から新書を2冊。
 新書は各出版社から出ていますが、今回はどちらも筑摩書房から出版されている『ちくまプリマー新書』です。プリマー(primer)=入門書という意味をもつこのシリーズは、中高生を始めとした若い読者が対象です。
 著者の方たちにも「若い人向けにわかりやすく書いて下さい」とお願いしているそうなので、言葉もやわらかく解りやすい。創刊時から「自分の頭で考えましょう」をコンセプトに、その手助けになる本を作ろうという姿勢でつくられてきました。

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  ちくまプリマ―は他の新書に比べてデザイン性の高い個性的な表紙です  

 361 友達は永遠じゃない~社会学でつながりを考える/森真一
 現代社会は「人間関係が希薄だ」とか「無縁社会だ」と言われたりします。でも、それは「社会がこうあるべき、人間関係はこうあるべき」という思い込みを持った人の考え方。現代は「多様社会」といえるのではないか。
 森さんはprovisionalという単語を用い「今のところあるけれど、この後、多分変わっていく可能性が高い」という意味で「一時的協力で成り立つ社会だ」といいます
 人々の一時的な協力が繰り返されることで、社会は日々変化更新され、完成することのない永遠に建築中の建物。私たちは、その時々のシチュエーションにあった適切なやり方を考案している。
 そんな一時的協力理論というフィルターを通すと、友人関係やネット社会もちょっと違って見えてくるかもしれません。

 361 たったひとつの「真実」なんてない~メディアは何を伝えているのか?/森達也
 ニュースや新聞は絶対に間違えないと思い込んではいけません、だからと言って何でもかんでも疑えばいいって事でもありません。
 メディアからの情報で、人々は混乱する、刺激をもらう、一喜一憂する。時には、その情報に踊らされ大きな間違いを犯す。たくさんの人が泣いて、たくさんの人が亡くなり、絶望する。
 じゃあメディアは必要ない?いいえ。人と人との繋がり、関係を断ち切ることはできない。遠く離れた場所で苦しんでいる人がいれば力になりたい、できることをしたい。そのための情報を得るのに必要不可欠なのもメディア。
 私たちはメディアから情報を受け取り、世界観をつくる。でも、その情報に大きな影響力を与えるのも私たち。あくまでもメディアをツールとして正しく使う方法:メディア・リテラシーを身につけ、自分の目で確かめる事が大切です。