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4回目の3月11日

 東日本大震災から4年。今日は津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市にある製紙工場の復興を追った1冊を紹介します。

   紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている/佐々涼子(早川書房)        
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 印刷用紙の原料は、ユーカリなどの広葉樹チップと松の仲間の針葉樹チップ。それらを微妙な加減でブレンドし、手触りや質感、重さを変え単行本や文庫本、雑誌用にと製造されます
 そんな国内出版用紙の約4割を担っているのが日本製紙。その主力であり、世界屈指の規模を誇る石巻工場。震災当日、大きな揺れの後に起こった津波による被害は壊滅的で、工場の機能は完全に停止してしまいました。

 しばらくするとその影響が出版業界に出はじめます。深刻な紙不足。書籍や雑誌の刊行スケジュールに大きな狂いが出て、発売中止になるケースも。

 「半年で復興する」「全部のマシンでなくていい、まず一台を動かそう」そう宣言した工場長のもと、電気もガスも水道も復旧していないなか、従業員たちの闘いが始まります。
 全国の出版社の「石巻の紙を待っている」という熱いメッセージ 「工場の煙突から、以前のように白い煙を上げてほしい」という地元の思いが背中を押します。
 壊滅的な状況からわずか半年で主要マシンを稼動させ、その1年後には「完全復興」を遂げるまでの奇跡のドキュメントです。

 ふわっとして厚みがあり軽くて持ち運びに便利、子どもたちが柔らかい手で触っても指を切らないようなコミック誌用の優しい紙。 毎日めくっても破れない、耐久性重視の教科書用の紙。 限りなく薄く、いくら使っても破れにくく、静電気防止加工された辞書のための紙。
 私たちが当たり前に接するそれぞれの紙は、多くの人の手と、すばらしい技術によるものです。