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太宰治の『女生徒』

 太宰治にまつわる新刊を1冊。
の前に、太宰自身の作品 『女生徒』 を紹介します。この作品は、女学生の「私」の1日が一人称で綴られたものです。
 そういえば、昨日紹介した本の中で太宰の作品を 「つぶやきながら語りかけるような独特の文章が、今でいうブログのようだ」 と評する人もいました。

女生徒/太宰治(角川書店、他)
 寝起きはかわいくない、「朝の、意地悪」から始まり、友だちとお昼ご飯を食べながらするおしゃべりの様子、鏡に映る自分の顔を眺めて一喜一憂する様子。戦前の10代の女の子の1日をみずみずしく書き綴ったもの。
 そこには1日の出来事だけでなく、将来に対する希望と不安、プライド、嫌悪感、自分の個性を愛しているのに周りの目を気にしてそれを体現できない葛藤、など
10代特有の心の動きも丁寧に描かれています。これがアラサー・男子による作品なんです・・・。 

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太宰治の辞書/北村薫 (新潮社)
 主人公で出版社に勤める「私」は、大学時代の友人から太宰治の本「女生徒」を贈られます。実は「女生徒」は、当時太宰に送られてきた愛読者(本物の女学生)の日記に基づいて書かれたものです。
 原案となった日記も後に出版されているので、「私」は早速取り寄せ読み比べていきます。本物の日記は春から夏にかけて綴られたもの。それを太宰は、みごとに初夏の1日にまとめあげました。
 「私」はそこで、当時太宰が使っていた辞書についても興味を持ち始めます。

 他にも『晩年』のエピグラムとして知られる『生れて すみません』にまつわるエピソードなど、実在の作家たちの言葉や資料を組み込まれた作品です。ぜひ、2冊併せて読んでみてください。