こんな本を読んだ ⑦
あの頃の中井先生は、こんな本を読んだ。
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遠藤周作を立て続けに読んでいた時期があります。
どの作品も印象的で宗教に関する思索を深めることが出来ました。宗教との距離感、近親者との死別、世界の民族宗教対立を考えるときにも、彼の作品を思い出してしまいます。
そのきっかけを作ってくださったのは、高校3年生の現代文の担当だった三善貞司先生です。教科書『沈黙』の授業が印象的で、物静かな先生の語り口によって、キリシタン弾圧と責めさいなまれる信者の様子、主人公の心の動きにドキドキしたものです。
沈黙/遠藤周作(新潮社) 内容を少し紹介します。
キリスト教徒が弾圧された江戸時代、宣教師セバスチャン・ロドリゴは長崎奉行所に追われ囚われの身となります。
棄教*することを説得されますが、信仰を貫く殉教を期待して牢につながれます。投獄されたロドリゴは、そこで遠くから響く鼾(いびき)のような音に不満を述べます。ところが、それは鼾なぞではなく、拷問されている信者の声であること、その信者たちはすでに棄教を誓っているのにロドリゴが棄教しない限り許されないこと、を告げられます。
自分の信仰を守るのか、イエスの教えに従い苦しむ人々を自らの棄教という犠牲によって救うべきなのか、選択を突きつけられたロドリゴは、踏絵を踏むことを受け入れます。
*棄教・・・それまで信仰していた宗教を捨てる事
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高校生だった中井先生は三善先生の授業を通して、遠藤周作だけでなく他の多くの小説家と出会ったそうです。