桃の節句です
今日はひなまつり。桃の節句です。梨木香歩さんの作品でひな人形が印象的に登場する作品があります。
りかさん(偕成社)
小学生のようこは、ひな祭りに欲しいものはないか、と尋ねたおばあちゃんに「リカちゃん」人形が欲しいと答えます。しかし、後日、届いたのは、真っ直ぐな黒髪のおかっぱ頭に振袖を着た市松人形。半紙に筆で「りかちゃん」と書かれています。
あまりに想像とかけ離れた「りかちゃん」に落胆したようこでしたが、翌朝、りかちゃんから漂う心地の良い気配に気づき、思わず抱きしめて名前を呼んだ途端、何か不思議な力に包まれます。
以降、ようこは「りかさん」と話が出来るようになり(その際、少し言いにくそうに「りかさん」と呼んでほしいと言われます) 「りかさん」といることで、色々なモノや人形の気配を感じる身体のセンサーのようなものが発達していく気がします。
もちろん、おばあちゃんはそれを知っていて「りかさん」をようこに譲ったのです。
ようこは飾られているひな人形や抱き人形たちが持つ、それぞれの持ち主の思いを(楽しい記憶だけでなくつらい記憶も)、りかさんの力をかりて鎮めていきます。
「いつくしむ」とでも言うその力は、大人になるにつれ、ようこの持つ独特の雰囲気を醸し出すことになります。
成長したようこの物語は からくりからくさ(新潮社) で読むことが出来ます。
なくなったおばあちゃんの家をアトリエに、染色作家としての道を歩き始めたようこと、友人たちの共同生活をえがいた作品です。もちろん、りかさんも一緒です。
梨木さんは「西の魔女が死んだ」でも、主人公とおばあちゃんの絆を描いていましたが、この物語でもようことおばあちゃんのつながりをとても大切に描いています。