直木賞受賞作
第155回直木賞受賞作 海の見える理髪店/荻原浩(集英社)が届きました。
荻原さんは、5回のノミネートを経ての今回の受賞です。
荻原さんはこれまで、都会から山間の村の古民家に引っ越してきた一家が、その家に住みついていた座敷童と出会い、バラバラになっていた家族の絆を取り戻していく様子を描いた愛しの座敷童(朝日新聞出版) 引っ越し先の訳ありのアパートで、押し入れに住む少女(どうも幽霊らしい)と一緒に暮らすことになった若者の物語(結末にはちょっとしたどんでん返しが)押入れのちよ(新潮社) など、異世界の住人との関わりを少しユーモラスにほっこり描いたものや、若年性認知症を克明に描いた明日の記憶(光文社) など様々な作品で知られています。
受賞作は6つの作品による短編集です。表題作「海の見える理髪店」は、店主が一人で営む海辺の小さな町の理髪店が舞台。一面に海が映る大きな鏡があるその店で、鏡越しに向き合った客である主人公に、これまでの波瀾に満ちた半生を語る店主のやり取りが描かれています。
他にも、仕事人間の夫に愛想を尽かして実家に戻った妻のもとに届いた不思議なメール「遠くから来た手紙」、一人娘を15歳で失った夫婦が、成人式を前に娘あての着物カタログが届けられたことをきっかけに突拍子もない事を思いつく「成人式」など、家族をテーマにした物語が集められています。