時と人
時間というのは誰にでも平等に与えられるもので、二度と取り返すことのできないもの。そんな大切な時間について、あらためて考える。今日は時の記念日です。
今日は北村薫さんの『時と人シリーズ』からスキップ(新潮社)を紹介します。
北村さんの「スキップ」「ターン」「リセット」 『時と人シリーズ』3部作です。
高校2年生の真理子は、楽しみにしていた運動会が雨で途中中止になり、がっかり。友だちの池ちゃんは言います。「来年があるよ、わたし達まだ二年だもの」
2人のおしゃべりは続きます。10年後はどうしてるかな、どんな人と結婚してるかな、子どもがいるかな。きっと気がつかない程、穏やかな坂を上るように、いつの間にか大人に行きついていくんだろうね。
家に帰り、疲れてついうたた寝をしてしまった真理子は、すっかり眠り込んでしまいます。目を覚まし慌てて起き上がった真理子の目に入ってきたのは、見慣れない部屋や洋服、自分を「お母さん」と呼ぶ女子高生、昭和じゃない平成という時代。
そんな事あり得ない。意を決してのぞいた鏡に映っていたのは、つい数時間前に校舎の鏡で見たのとは違う自分の姿でした。
42歳、高校の国語教師の私。夫と17歳の娘がいる私。でも心は高2の運動会の日のまま。来年はなかった、いつの間にかでもなかった、25年もの時をスキップしてしまったひとりぼっちの真理子。
受け入れられるわけない、でも受け入れて生きていかなくちゃいけない。持ち前の意地っ張りと強くしなやかな17歳の心が、42歳の身体を歩ませていきます。