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書籍の紹介2

理工教育を問う―テクノ立国が危うい
産経新聞社会部=編.新潮社(1995)193ページ
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書き出しで紹介されている小学生と母親の会話に驚いた―。

「お母さん、カブトムシが動かなくなったからお金ちょうだい」
「いいわよ。だけど、どこまで(新しいカブトムシを)買いにいくの」
「近くのコンビニ(コンビニエンスストアー)」
「コンビニ?」
「うん、電池を買ってくるんだ。カブトムシの電池を替えてあげるんだよ」(pp.7-8)

この本が世に出たのは平成7年(1995年)1月、阪神淡路大震災の直後だ。このころ、学校では受験勉強などの「詰め込み教育」が子供から自由や創造力を奪っていることが問題視され、「ゆとり教育」がスタート。学習内容が大幅に削減された。

当時、私は高校3年生。そのとき、偶然立ち寄った書店でこの本に出会い、書き出しを読み、生まれて初めて日本の将来に危機を感じた。

高校生なりに、理科系に進むことを決め、進学する学部・学科まではっきりと決めていた。しかし、これといって就きたい職業があるわけではなかった。大学生となり将来を考え出したとき、この本を何度も読み返した。そして、いつ知れず自分の興味は教育へと向いていった。この本は私を教育現場に導いてくれた本ともいえる。

内容は、学力低下▽理科・数学の授業時間数削減▽教員の質▽大学入試の問題点と入試改革―など、現在でも取り上げられる話題ばかり。出版から10年以上経った今、読み返してみても、これらの内容は色あせない。「この10年、理科・数学教育は何をしていたのだろう」と、ふと考えた。

これから理科系大学への進学を考えている人、理科・数学の教員を目指す人にお勧めの1冊だ。
(道北秀寿)