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こんな本を読んでみませんか12

 中学3年生は毎年、研修旅行で沖縄に出かけます。関西とは異なる自然や文化を感じてもらうことも目的の一つですが、「平和」を考えてもらうことができる場所ということもあります。沖縄は終戦直前に「鉄の暴風」とよばれる激しい攻撃がおこなわれ、20万人以上の命が失われた場所です。また今なお米軍基地の存在が日常生活に強く影響している場所で、東アジアが緊張状態になると戦場に最も近い場所になっています。

 今日紹介する本の舞台は太平洋戦争当時、沖縄と同じくらい激しい戦闘にさらされた硫黄島です。昨年、クリント・イーストウッド監督が手がけた映画「硫黄島からの手紙」「父親たちの星条旗」が公開され、話題になりました。1ヶ月の戦闘での死者は日本側20000人、アメリカ側7000人といわれています。この硫黄島での戦闘を題材にした作品が、城山三郎の「硫黄島に死す」です。主人公はロサンゼルスオリンピックの馬術大障碍の優勝者バロン西こと西中佐です。馬術というもっとも貴族的で欧米的なスポーツを愛した軍人が、「硫黄島玉砕」のニュースが流れた4日後にまだ残存者を率いて戦わなければならなかった悲哀を感じて欲しいと思います。

 戦場という異常な場に置かれると、どんなに優秀な人物であっても冷静な判断はできなくなることがわかります。沖縄戦もそうですね。6月25日に作戦本部が戦闘の終了を発表したのに、それが現場には伝わらず、実際に沖縄守備軍が米軍に降伏したのは、日本がポツダム宣言を受け入れて戦争が終結した8月15日よりも、半月以上遅い9月7日でした。A.M.
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