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こんな本を読んでみませんか11

 8月に入ると「戦争」や「平和」が話題になりますね。昨日は広島に原子爆弾が投下されて62年目の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)がおこなわれていました。君たちには井伏鱒二の「黒い雨」を紹介しました。60年以上も前におこなわれた「太平洋戦争」という歴史を風化させないために努力している人々がいる。それはなぜなのかということを考えてほしいと思います。歴史は暗記するために学ぶのではない、先人たちの経験を生かすために学ぶのだと聞いたことがあります。

 新潮文庫の「きみに読んでほしい50冊」には「戦争」をテーマとした小説もあります。大岡昇平の「野火」もその1つです。「俘虜記」「レイテ戦記」…この作者は井伏鱒二とは違って、戦争をテーマに取り上げた作品が多いです。戦争という極限状態の中で人間はどう変わっていくのか、敗北が決定的なフィリピン戦線で病に冒され、隊を追われた兵士の異常な体験を描いた作品です。それを異常と思うことが出来るのは、飽食の時代と言われる私たちの暮らしが田村一等兵の体験した極限状態からはほど遠いからでしょう。でも、その幸せを当たり前のことのように思って暮らしているのはどうなのでしょうか。

 戦争は怖いこと、悪いこと、嫌なこと…でも昔の話で自分たちには関係ないと思っているとしたら、それは大きな間違いだと思います。もっと今の世の中をしっかりと見て欲しいと思います。現在でもなお戦争の傷跡は人々の心に生々しく残っていますし、世界の各地には戦争そのものが残っています。決して遠い世界の出来事ではないのです。 A.M.
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