こんな本を読んでみませんか15
先日紹介したペルセウス座流星群は見ましたか? 流星群にかぎらず、少し夜空を眺めてみてください。満天の星空を時間も忘れて眺めていたら、多少嫌なことや辛いことがあっても、たいしたことじゃないように思えてきますよ。大阪では夜明るくて見にくいかもしれませんが、帰省している人にはチャンスかもしれませんね。
今日紹介する本は、野尻抱影の「星と伝説」です。抱影は「冥王星」の発案者です。冥王星は2006年に惑星から準惑星に降格したことで話題になりましたね。抱影は、冥王星だけではなく、星の和名や星座にまつわる伝説を研究していた文学者です。今から30年も前に亡くなられたので、もう作品が増えることはありませんが、各地の科学館やプラネタリウムで使われている星座の話の多くは、抱影の影響を受けているといわれています。
昴(すばる)という星の集まりを知っていますか? ハワイに設置された望遠鏡の名前にもなっているこの星はプレアデス星団M45のことです。地球から400光年の距離にあるこの星団は、約6千万~1億歳と若い年齢の青白い高温の星の集団です。清少納言が枕草子の中で、「星はすばる。ひこぼし。ゆうづつ。よばひ星、すこしおかし。尾だになからましかば、まいて(大意:星といえばすばるが一番美しい。彦星=アルタイルや宵の明星=金星も良いのだけれど。流星も趣きがある。尾を引かなければもっといいのだけれど)」と書いた昴は美しい星として日本でも昔からなじみの深い星です。日本では六連星(むつらぼし)つまり6つの星の集まりとして見られていますが、ギリシャ神話のプレアデスはオリオンに追いかけられる7人のニンフの姉妹として描かれています。星を眺めていると想像力がひろがるのでしょうか、世界各地に豊かな神話や伝説を残していることがわかりますね。
ここでは、偕成社文庫を取り上げましたが、講談社学術文庫から「星の神話・伝説」,中公文庫BIBLIOから「続 星と伝説」「星三百六十五夜」「新星座巡礼」など、いくつも抱影の著書は出ています。どれか手にとってみてはどうでしょうか。A.M.