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こんな本を読んでみませんか 8

 出張で東京に来て3日目になります。私自身は科学万能時代といわれた時期を中学生として過ごした世代ですが、朝から数時間で東京まで出かけることができ、出張先からブログの更新が簡単にできる便利さには感動を覚えます。今の中学生にはできて当たり前のことが多すぎるのかもしれませんね。できない不便さも実感してこそ、できる便利さが理解できるのかもしれません。

 さて今日紹介する作品はSF小説です。SFとはサイエンス・フィクション(科学的な空想)のことです。以前に紹介した「二年間の休暇」の作者ジュール=ベルヌJules Verneや、「タイムマシン」「透明人間」「宇宙戦争」の作者ウエルズHerbert George Wellsらが、SFの開祖ともいうべき人たちになると思います。古典的な名作ですから読んで損はないのですが、やはり古さは否めません。そこで、今回はハインラインRobert Anson Heinleinの「夏への扉」を紹介します。これも1957年の作品ですから50年も前に書かれているわけですが、それを意識させない作品だと思います。

 主人公は家事ロボットを発明した優秀な技術者ダン(と愛猫ピート)です。幸せな生活をおくるはずの彼は親友マイルズと恋人ベルの裏切りにあい、すべてを失ってしまいます。失意のままピートと30年間の冷凍睡眠につくことで現実から逃避しようとするのですが、タイムマシンの存在を知ったことがきっかけで、人を信じる気持ちを取り戻し、幸せを手に入れるために最善をつくそうと決意します。表題の「夏への扉」は何を指しているのかを考えながら読んで欲しい作品です。

 「過去よりも現在、現在よりも未来のほうが優れており、世界は日々進歩している、人間が環境に働きかけ、科学技術によってよりよい世界を築いていける」と信じていた時代の文章ですから、読んでいて未来を信じる気持ちにさせてくれることと思います。今の君たちにとって大切なのは、素晴らしい未来が訪れると信じることではないでしょうか。将来はあまり期待できないと思っていると、刹那的な生き方しかできなくなります。その意味でも読んで欲しい作品です。A.M.
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